名作落語大全集

​【粗筋】
　稲川という力士、大阪から江戸へ出たが、十日間全勝しても贔屓が出来ない。大阪へ帰ろうと考えていると、汚い乞食が現れて蕎麦をおごるから食ってくれと言う。「大名でも乞食でも、贔屓に違いはございません」と快く蕎麦を食うと、乞食の合図で、酒肴が運び込まれる。乞食の正体は河岸（かし）の新井屋で、大阪見物で稲川を見て惚れこんでいた。河岸のみんなで贔屓にしようと相談すると、乞食の出すようなものでも口にするようなら贔屓にしても惜しくはない、と賭けをすることになったのである。これで河岸の皆が贔屓にする例はなく、これをきっかけに人気が出るという……
「相撲取りを夫を持てば、江戸長崎や国々を」でお馴染みの『関取千両幟』の稲川は、この人をモデルに書きましたものでございます。