【粗筋】
大工の棟梁が兄貴分に盆栽の万年青(おもと)を預かったが、金が必要になって川上という質屋にぶち殺して洞穴(どうけつ)を埋めた。「ぶち殺して洞穴を埋める」とは「質入れして金の手当てをすること」である。これでは面目なくて兄貴に会わす顔がないと言っているのを、隣の部屋で酔っ払いが夢現で聞いていた。この男の奉公先の旦那の姪が、年頃で悪い虫がつき、固いと評判の棟梁に預けられたのだが、ややこしいことにこの娘の名がおもとさんなのだ.
「おもとをぶち殺して洞窟に埋めた」と言うのだから、さあ大変。
早速旦那に報告すると、旦那も半信半疑ながら、棟梁の兄貴分に話をさせようということになった。兄貴もびっくりして棟梁のもとへ行くが、棟梁万年青を質に入れたことを恥ずかしがって隠そうとするので、どうも話がかみ合わない。それでも追求された棟梁が万年青を川上に放り込んだと告白。最初に聞き耳を立てていた男が押入れに隠れていたが、これを聞いて飛び出した。「あんた、その川上に放り込んだのはいつのことです」
「そうさなあ、もう九ヶ月ほど前のこった」
「それじゃあ、もう流れたんべえ」
「なに、利上げしてある」
【成立】
三遊亭円左(1)の速記では、枕で自分の専売だと言っているので、当時は他に演り手がなかったのだろう。今もいないのか……聞いたことがない。
質流れの期限は八カ月、それ以前に借り主が利息を上げて流れるのを防ぐ処置が「利上げ」である。質入れすることを「ぶち殺す」という語源は未詳。同じ意味で「曲げる」というのは「十」の字を「曲げる」と「七(質)」になることから。質屋の「川上」、娘の「おもと」という名前と質屋の符丁の行き違いが実に巧みではあるが、まあ、とにかく質屋に縁の薄くなった現代では演じられない噺であろう。