【粗筋】
突然の雨、親父が家に戻って女房と息子・吾一郎の話を始める。町に出て、5年前に金を借りに来たきり、生きているかどうかも定かでない……そこへ走って来た村人が、中井の一人息子が交通事故で死んでしまったと伝える。孝行者だったのに、親より先に死ぬとは、最後に親不孝をしてしまったな……そう呟きながら表へ出ると、カラスが鳴いている。人が死ぬときに鳴くというが、石でもぶつけてやろうかという女房に、亭主が、
「やめておけ、カラスは神様のお使いともいわれているぞ」
さて、カラスの方も息子がどこへ行ったのか、旅から旅への旅ガラスになっている。そこへカー太郎が死んだという知らせ。下を見ると人間達がバタバタと出掛ける様子……腹が立つので石でもくわえて行って頭に落とそうかという女房に、亭主が、
「やめておけ、人間は万物の霊長ともいわれているぞ」
さて、行方知れずだった人間の息子の方の吾一郎、一生懸命働いて店を持つこととなった。カラスを見て子供の頃にカラスというあだ名だったことを思い出す。
「カラスはええなあ、どこへでも飛んで行けて……おおい、親父に逢うたら、もうすぐ帰ると言うとくれよ……」
「こちらこそ、親にもうすぐ帰ると言うてくれるカー」
【成立】
桂三枝の創作落語、第66作目。昭和62年1月の作品。