【粗筋】
予想に反して、梅三郎は若江の母のいる鴻ノ巣に身をひそめていた。書面を奪われた有助が取り戻しに来たのを捕らえ、大蔵の悪巧みに気付く。書面は暗号で書かれ、解読できずにいた。有助は縛られたのを縄抜けで逃げ出し、大蔵の元へ戻って全てを報告する。紋之丞の暗殺に邪魔な警備の権六を殺すよう頼まれ、ここでも権六に捕まってしまう。裁きの場で、権六を陥れようとするが、結局失敗して牢に入れられる。
渡邊祖五郎の一行、お竹に癪の病が出て動けなくなってしまった。そこへ、梅三郎が鴻ノ巣にいるという報せが入った。大蔵が双方を戦わせようと仕組んだ情報である。お竹と看病の忠助を残して、祖五郎は一人で鴻ノ巣に行き、ついに梅三郎を発見する。しかし、梅三郎は奪った書面の謎を解いていた。神原と大蔵が渡邊織江を殺す相談をし、そこに若江の手紙を落として梅三郎を下手人に仕立てるということ、更に紋之丞様を亡き者にしようとしているらしいことも綴られている。祖五郎も、最初から梅三郎が父を殺したことは信じておらず、私恨よりもお家の大事と、共に美作へ向かう。
さて、姉のお竹は体調が良くなると忠平と共に江戸へ向かうが、途中、忠平の方が病にで倒れて死んでしまう。宿の主人は竹を追い出そうとし、息子はその借金のかたに竹を女房にしようと企む。竹が言われるまま宿賃や葬儀代まで出したので、親子はびっくり。主人は金に目がくらんで夜中に竹の部屋に忍び込んで布団を刀で突き殺すが、布団をのけると出て来た死骸は忍んで来た息子だった。泊まり合わせた僧が父を出家させ、竹を守って江戸まで送り届ける。
【成立】
手紙の暗号は大したものではない。「絹木綿」が織物だから織江を指す。「今を春べと」という歌から、春部を「この花」などと表現したもの。悪党どもの手紙にしてはなかなか風流である。この場で解けないのが「千早」、実は神原という人物を指すのだが、落語ファンなら百人一首の歌でお馴染みの通りである。最後の宿では諸国の旅人が集まって噂話、「乞食の産(乞食がお産をするが逆子で足から出る。お金を出すと足を引っ込めて手を出したという小噺)」など馴染みのネタも入る。