【粗筋】
エジプトの女王となったクレオパトラ、17歳の時に、10歳の弟と結婚させられる。これは当時の風習だから週刊誌にも取り上げられなかったが、年頃の女の子が弟の子守では詰まらない。3年後、ジュリアス・シーザーが来ると、絨毯が贈られた。土地の名物だから、すぐ見たいと言うシーザーが広げさせると、中から美女が飛び出した。邪魔が入らぬようクレオパトラが絨毯に入って会いに来たんで。シーザーの力を借りて弟を追い出し、エジプトの女王となる。半年後、
「シーさん、ローマへ帰るんですって。いったいどういう訳で」
「シーザー言って聞かせやしょう。お前の色香に迷うても、国を忘れぬ愛国者。国へ帰ったその上で、迎えに来るから……チョン……待っていろ」
ってんで、ローマに帰るが、ブルータスに殺されちゃった。アントニウスがブルータスをやっつけて、シーザーの後を引き受けるついでにクレオパトラを手に入れようとエジプトから呼び出した。
「これがパトラちゃん……もっとこっちさ来う、こけぇ来う、こけえこう」
と鶏みたいになって、エジプトに帰ったクレオパトラを追っ掛けて、エジプトに住民票を移し、地中海沿岸を抑えようとして、ローマのオーグスティヌスと対立、追い詰められて、「アレクサンドリアも今宵かぎり、縄張りを捨て、国をすて……」と覚悟したところへ、クレオパトラが自殺したという情報、
「ううん、わしも井戸に身を投げべえ」
「どうして井戸なんです」「昔から言うではないか、英雄井戸(色)を好む」
井戸が無いので、胸に短刀を突き立てたところへ兵士が駆け込んで来た。
「クレオパトラの自殺は誤報でした」
「あれ……早く行ってよ~」
これを知ったクレオパトラ、毒蛇に胸を噛ませて自害する。あたしも毒蛇になりたかったね。蛇で命を絶って、これで本当に身(巳)の終わりとなりました。
【成立】
大野桂作、柳亭痴楽が演った地噺。
【蘊蓄】
アレキサンダー大王が来たというので付いた地名がアレクサンドリア。水戸黄門が来たというのがミトコンドリア……本気にした人がいるので、後の方は嘘ですよっと言っておく。
ジュリアス・シーザーから出たのが「ジュライ」、オーグスティヌスから出たのが「オーガスト」。私の先生は、「1月から6月までは神様で、7月8月にこの二人が割り込んだ。だからセプト=7、オクト=8、ノナン=9、デカン=10という、数字が2つ
ずつずれた」と説明していたが、全くの嘘。古代ローマでは1年が3月から始まったのである。因みにナポレオンが制定したカレンダーは、1年が10月から始まる。
セプト、オクトで書いたが、高校の理科で、メタン、エタン……と炭素結合の数字を10まで覚えたから、誰でも知っていると思ったら、意外に覚えて居ない人が多いので驚く。オクトが8で、8本足の蛸を「オクトパス」というのは誰でも知っているのに、なぜ他を忘れちゃうんだろう。