【粗筋】
播州飾磨の回漕問屋で、お船止めの日に船を出したうえ海坊主を殺したため、たたりで頭の長い子が生まれた。この子をおいては家のためにならぬと、大阪の薬問屋に奉公に出した。その店に大家の使いがお嬢さんのおできを直す薬を探しに来た。どんな薬も効かないのだが、「外法頭の男になめてもらうとたちどころに治る」
というお告げがあったので、例の男に白羽の矢が立ち、なめてみるとたちまち治った。
薬問屋では、「できもの治します」の看板を上げ、この男になめさせたので、店は大変な繁盛。生き仏扱いされ、開帳を開くことになった。ここでは参詣道と下向道を作り、一方通行にして流れをよくした。案内の者が参詣を終えた人に、
「下向は左ィ」
とどなっている。外法頭の男は、お供えを目の前に置かれても、生き仏様だというので食うことができない。空腹に耐えきれず、
「外法はヒダルイ」
【成立】
「外法頭は腹が減っている」という意味の言葉が「下向は左」との地口になっている。
【蘊蓄】
空腹になると「脾臓がだるい」と感じる。これがつまって空腹であることを「ひだるい」というようになった。江戸時代は「ひ」で始まる言葉だから「ひもじ」といい、「ひもじい」という。『アンパンマン』が「お腹がすいた」ではなく「ひもじいよう」というのが何となく面白かった。