【粗筋】
慶応3年、西郷隆盛と坂本龍馬が会見、日本の夜明けを語り合うが、この時龍馬が持っていたのがゴルフクラブ。エゲレスで流行っている遊びで、この棒で前の玉を思い切り叩く。「玉は二つしかなかけん、大事にせんとあきまへん」西郷どん、興奮すると大阪言葉になる。龍馬はすでに京都大倉山の中にゴルフ場を作っていて、そこで新選組の近藤勇と会見することになっていると語った。
さて、近藤のほうは「コルフ」ってものが何だか分からない。クラブという棒で殴り合う西洋の剣術らしい。とにかく2対2とされているので、沖田総司を連れて行く。そこで初めてルールを聞いて、坂本と土佐の中岡慎太郎。近藤と沖田がペアで勝負をすることになった。新選組の二人は初めてなのでハンデをと言われるが、頑固な近藤がそんなものもらえるかと拒否。しかし、金を掛けることになってハンデを増やしてもらうことにする。もちろんアドバイスを無視する近藤が足を引っ張ってOBを連発する。
「またOBじゃあ」
さあ、屯所に帰った近藤、
「刀の手入れをするから、心を落ち着けるために誰も近付けるな」
と言ってクラブを振る練習。そこへ坂本が暗殺されたとの報告が来る。
「何、あの坂本どんが……何と言うことだ、もうゴルフに行けない」
翌年、鳥羽伏見の戦いが始まると、新選組も破れて散り散りに逃げる。近藤と沖田、気付くと坂本が作ったゴルフ場跡に来ていた。
「よし、京都へは二度と戻ることもあるまい。思い出にゴルフをして参ろう」
「局長、クラブがありません」
「この刀でよい……いいか、実は隠れて練習しておったのじゃ。どうじゃ……」
「ナイスショット……ワンオンですよ……球がないとうまく行きますねえ」
「よし、あれを入れに行くぞ」
「局長、敵の大砲の音が近付いています。あの高台では目立って標的になります」
「かまわぬ、お前はそこで見ておれ……坂本どんとのお別れじゃ」
「局長……ああっ、危ない」
ドン、ヒュ~~~
「局長、大丈夫ですか」
「敵の大砲はかなりそれた……OBじゃあ」
【成立】
桂文枝(6)の創作落語。第36作、1982年11月の作品。
【一言】
(長崎出島の資料館にゴルフクラブが展示されていたので)調べていくうちにゴルフが江戸時代に日本に入ってきていると分かった。それは鎖国時代出島にいたオランダ人が書いた「商館日記」に出島を訪れた客にゴルフをして見せたと言う記述があったからだ。
幕末、新しいものが好きだった坂本竜馬がゴルフのクラブを持っていたとしても不思議ではない。彼は当時としては珍しく革靴を履き、ピストルを持ち歩いていたからだ。(桂文枝(6))
【蘊蓄】
1987年に東宝で映画化、慶応2年、寺田屋で襲撃された龍馬が新選組と遭遇する場面から始まり、ゴルフ外交で戦争を避けることが出来ると、「船中八策」を解く。落語の後、近藤は刑死、沖田は病死して明治維新を迎える。下関の浜で龍馬を忍び、クラブを海に返すおりょうの姿でエンディングとなる。龍馬を渡瀬恒彦、おりょうを高橋惠子、西郷隆盛を西からきよし、桂小五郎を島田紳助、土方歳三を西川のりお、中岡を武野功雄、沖田を橋爪淳、近藤を文枝本人が演じた。その他上方のお笑い芸人が多数出演している。