【粗筋】
大阪からの二人旅、途中で友達に会って3人になった。馬子に勧められて三宝荒神(さんぼうこうじん)という馬に乗るが、馬の足が悪かったので3人ともゆさぶられてひどい目にあう。
明星の茶屋の本陣、三田屋三郎兵衛に泊まるが、隣の侍が女相手に酒を飲んでいるのに刺激され、「おじゃれ」という宿場女を買うことにした。番頭が言うには、一人だけ尼が混じっているので、誰がそれに当たるか、暗い部屋で手探りで相手をつかまえてくれと言う。明るい所で見たら、3人とも尼だったので大笑い。
翌朝、祝儀をはずもうとして、隣の侍の真似をして「櫛など買うてくれ」とか「びんつけなど買うてくれ」と言うが尼だから頭に毛がない。尼達に笑われて、
「ううん、月代(さかやき)のとき刷毛でもひっつけておくれ」
【成立】
上方の「東の旅」の13章。大和三本松の「鯉津栄之助」に続き、後は「間の山お杉お玉」に続き、その後伊勢神宮に参詣する。本来は二人で旅をしているが、この部分だけ友達と行き合って三人になる。これについて、桂米朝は、参宮道中で、一駄に三人乗せる「三宝荒神」を入れたいので一人増やしたのだという。ビッコの馬に三人が乗れば、三人が影響を受けるので笑いも多い。
東京の「三人旅」噺が女郎買いの連続であるのに対し、上方の旅の噺にはその場面がない。それを埋めるため、この噺を東京から移入することにしたという説もある。落ちの「月代」は頭の上を剃った部分。浪人者は金がないので、月代が伸びている。尼さんも剃っているのが生えてきたら……という落ちだが、分からないので今は東京と同じ落ち(前回「三人旅」小田原の巻を参照のこと)