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名作落語大全集

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2023.02.06
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カテゴリ:落語

【粗筋】
 お馴染み喜六清八の二人連れ、旅の途中茶店で一休み。すり鉢に入った木の芽あえを見つけるが、村の婚礼に出すものだと断られる。二人がこれを盗み出して全部食べ、空になったすり鉢を藪に投げ込むと、ちょうど昼寝をしていた狐の頭にコーン。さあ、狐は怒って姿を消す。
 喜六清八の行く手に大きな川が現れた。石を投げ込んで深さをはかろうとするが、耳に入る音はガサガサ。これは雨で水が溜まったのだろうと、二人して裸になると野次喜多道中の大井川よろしく浅瀬を探って進み始めた。これを見たお百姓が、「何だって人の大根畑を踏み荒らすのだ」とカンカン。二人は畑のなかをゴソゴソ歩き回っていたのだ。
 そこを離れて間もなく、日が暮れて山の中で迷子になった二人、尼寺にお籠もりと称して泊めてもらう。寂しい所ですねと言うと、尼さんの方では、
「いえいえ、夜になると、裏で骸骨が相撲をとったりしてガチャガチャとあばれます。また、墓に埋めた女の人が子供を生んだらしく、夜中になると『寝んねんよう、おころりよう』と唄って寺の中を歩き回るので、かえって人里などよりも賑やかな方で……」
 
とのんきなもの。村の金貸しの婆が死んだのでお経をあげに行くと言って、おびえる二人を残して出掛けてしまう。お灯明の火が消えると怪しい事が起こると言われたので見に行くと、火は消えかかっている。消えると「ネンネン・ガチャガチャ」が出るぞと、あわてて油を探して注ぐと、これが醤油。プスン、ショボン、ポショッと火は消えてしまう。
「消えたッ」
「……寝んねんよう……」
「出たァ」
「今のは俺やァ」
 二人がおびえているところへ、村の若い衆が金貸しの婆さんの死体を担ぎ込み、「夕べ息を引き取ったんですが、棺桶から手や足を出して『金返せ』と言って、おとなしく死んでおりません。早くお経をあげてもらわんといかんというので、こうして担いで来たんですがのう」
 と言う。尼さんと入れ違いになったと知り、村人は死骸を置いて帰ってしまう。おびえる喜六と清八の前で、棺桶の蓋がベリバリボリと開き、死体が起き上がって、
「金返せェ……」
「金を借りた覚えはございません」
 必死に拝む二人を見て、お百姓が、
「さっきの二人でねえか。大根畑で石の地蔵様ァ拝んで……また化かされなすったか」
 はっとして見ると、さっきの畑の中。ところが向こうにまだ寺がある。お百姓が見ると、狐がむしろを竹竿の先へ引っ掛けて持っているのだ。みんなで追いかけて行くと、狐はやぶの中へ逃げ込んだ。この尻尾をつかんだので、無理に引っ張る。とたんに尻尾がスポンと抜けた。良く見ると畑の大根を抜いておりました。

【成立】
 民話等の狐の噺を集めたもの。「東の旅」の一部。
 昔は、向こうに庵寺が見えるので行くと消える。こんどはこっちに……と何度も行ったり来たりさせられて、百姓が「ど狐め、ええ加減に旅人だましておかぬかい」と怒鳴ると、狐の声で「われもええかげんに庵寺つぶしておかぬかい」と言う落ちになっていた。「あんだらつくせ(阿呆なことはやめておけ)」という上方のののしりを使ったもの。「庵寺」という題もあったという。上田万年『近松語彙』には近松の『傾城吉岡染』に「やい、あんだらの大馬鹿ども」という台詞があり、愚鈍という意味で「彼のどろ」だという説が出ている。これでは「つくせ」がおかしい。
 「七度」というから昔は七回騙されたのだろうか。大根まででも3度、動く死体で盛り上がって切ると2度。東京では桂小南がやっていたが、二度目の石の地蔵さんで切って、「まだまだ騙されて参ります」とつくろっていた。擬音の面白さがピカ一だった。尚、「東の旅」の前の場面「煮売り屋」を簡単に演じてつないでいたこともある。
 尻尾を抜いたら大根だったというのは、「あんだらつくせ」が分からない東京で作られた落ち。今は上方でも使われる。寛政10(1798)年一陽亭秀朔の『無事志有意』にある。「狐敵(かな)わじと逃げ、追詰められて藪の中へ入る。尻尾をとらへひつぱる拍子に(中略)尻尾が抜ける。扨(さて)こそみせしめに是をみやげにするといふうしろから、百姓がなぜ大根をぬいた。」

【一言】
 (円成寺で、住職が語ってくれた話。村の青年会がある日、会長がその前に寺に用足しに来た。その用がすんで、とっぷり暮れた石段の下で、トラックが疾走した後、そのヘッドライトに目がくらんだのか、狐が立ち止まっている。会長と狐が顔を見合わせて驚き、狐は細い山道の方へ逃げ出した。)
 それをそのまま見すごしてしまえばよかったのに、会長は路上の石をとり上げて、狐の後姿に向って投げつけた。すると、どう考えたものか、その狐はまた引き返して来て、道の真中に立ちはだかったままじっと会長を見つめたそうである。とにかく大きな狐だし、あたりに人家もないことだから、会長もそこにすくんでしまったが、ようやく勇気を出して、狐の傍を通りぬけ、大いそぎで部落の会場に到着すると、集まった人々は、会長の来るのがあまり遅いので、すでに散会しようとしつつあるところであった。時計を見るとすでに十一時、寺を出てから三時間を経過していたそうである。(水原秋桜子:昭和40年の日記)

【蘊蓄】
 尼寺でお籠もりとするのは、女だけの寺で男を泊めることは出来ないから。本堂で通夜をやるという名目で中へ入れるもの。
 擬音が大変に面白い落語と感じるが、狂言などの影響か。『丼礑(どぶかつもり)』では落語と同じように川へさしかかり、深さをはかるため石を投げ込んで、「ドンブリ」といえば深い、「カッチリ」といえば浅いのだと判断する。『木六駄』では酒をつぐ音として、最初は「ドブドブドブ」、最後は「ピショピショピショ」と、残りが少なくなったことを表現する。






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Last updated  2023.02.06 05:20:00
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越智 健

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