【粗筋】
売れない洋装店、ブティックに代えようと甥が提案。前掛けや割烹着で売ってるのをお洒落な服で売るように代える。玄関はガラスの引き戸をドア、あるいは開けっ放しにする。フィッティング・ルーム、即ち試着室を作る。「布袋屋」という名前も、横文字に代える。「サロン・ド・ホテイ」では今一、店の主人の名前を付けるのがあるというので、半助とかつ子、「ハンスケ・アンド・カツコ」では漫才じゃないか……「ハッシー・アンド・キャッシー」。だんだん舶来品を置くようにして、「ニューヨーク直輸入」とかキャッチフレーズを出して、海外経験が多いというふりをして、「おこしやす」を「ハーイ」、「何さしてもらいましょ」を「メイ・アイ・ヘルプ・ユー」に代える。「海外生活がながいもので、つい英語が出ちゃう」とでもいえばいい。
さっそく実践するが、日本人と滅茶苦茶な英語で応対、そこへ本当に外人がやって来た。「May I help you?」
と言うと、
「Just Looking」
と答える。それでしつこく「May I helo you?」を連発して怒らせてしまう。旅行英語の本で調べると、「ジャスト」は「~だけ」、「Looking」は「見ること」、つまり「見てるだけ~」という冷やかしのことだと分かる。
次の客は太ったおばはん。
「サンキュー、あ、すみません、私海外生活が長いんで……」
と先手を取られる。
「セーター見せてもらえるかしら。Mのちょっと大きめ」
というが、どう見ても15号以上。一番大きいのを出すと、試着すると言う。
「どうですか」
と声を掛けると、
「そうねえ、小さいかと思ったら、案外大きいのでジャスト・フィットやわ」
「あんた、ジャスト・フィットて何」
「ジャストは何々だけやろ。フィットは何や」
「ほら、試着室がフィッティング・ルームやないの。試しに着ることよ」
「試しに着ているだけ……ああ、また冷やかしや」
【成立】
桂九雀が演った。この程度の英語なら、みんな知ってるのに……あ、だから笑えるのね。落語で英語のレベルが低すぎると思うことがあるが、やっと納得。
【蘊蓄】
女性服の15号って聞いたら、A社では9号がM、11号はちょっと大きめで、13号からLだって。B社に聞いたら11号はLで、13号はLL、15号だと3Lになるそうだ。因みに偶数はないらしい。このお店の一番大きいのは21号で6Lに当たるそうだが、実は10Lまでできますって……どのくらいって聞いたら、バスト160、ウエスト150、ヒップ145……段々小さくなるのね。