【粗筋】
魏の国の宗漢という医師、名医であるが貧しく、ある時楚の国からの使いが来て出掛けることにしたが、供の者を雇うことが出来ない。仕方なく妻を男装させ、供の者に仕立てて出掛けたが、帰り際に大雨に見舞われ、先方に泊まることとなった。ところがあいにく、この家で夜具を洗濯に出したため、先生は息子と抱き合って、供の方は下男と抱き合って寝ていただきたいと言う。今更自分の女房とも言えず、まんじりともせぬ一夜をおくった。翌朝、先生が帰った後、息子が、
「お父さん、あの先生は貧乏だね。褌をしていなかったよ」
と言うと、これを聞いた下男、
「そりゃそうだろう。あのお供の方なんか、金がなかったもんな」
【成立】
橘家円喬の速記が残る。日本を舞台にして「薬籠持ち」とも。貧乏だから「金」がないということだが、もう一つ意味がある……というが、うぶな私には何のことやら……
【一言】
妻に男装=何のことはなく、簪を抜かせただけ。昔、中国では男女とも服装から髪形から全く同じで、これでは困るというので、女には目印として、簪を付けさせたというのが、この噺の前提。(立川志の輔)
【蘊蓄】
魏・楚はBC4~3世紀の戦国七雄と呼ばれる国。隣合っているが、とても日帰りが出来るとは思われない。そこが落語たる所以。