【粗筋】
若旦那が最近凝ったのが拳闘、ボクシングだと聞いた幇間の一八、
「そんなものに凝るとは見当(拳闘)もつかなかった」
と洒落を言っているいるうちはいいが、
「人を殴りたくてしょうがない。まさかそこらの人に手は出せないから、お前を殴らせろ」
と言い出すからさあ大変。パンチ一発1円というので承諾する。
「これがストレートだ」
「ああ、さすが素人、腰が入っていないから大したことはないね」
「フックだ、ボディだ、アッパカットだ」
と、この最後のがまともに来たね、一八の顎にまともにヒットして一発KO。やばいってんで若旦那とんずら。
「一八さん、どうしたの。まあ、鼻の皮が全部めくれちゃって血だらけじゃない」
「若旦那の健闘の相手ってんで、ひどい目に遭いました」
「でも、お前さんだって、ここらで鳴らした幇間(太鼓)じゃない。いくらかにはなったんだろう」
「いいえ、皮が破れてなりませんでした」
【成立】
鈴々舎馬風(4)の録音が残る。内容も落ちも「幇間腹」をそのままでボクシングにしただけ。剃刀パンチなんてあるけれどね。アッパカットがまともに当たって鼻じゃあねえ。