【粗筋】
大根売りが長屋の男に呼び込まれる。
「こんな太くて立派な大根はありませんよ」
と言うと、
「俺のモノより細い」
と言う。
「そんな訳はない、比べて負けるようなら、この大根ただで上げます」
と賭けをして見せてもらうと、
「あっ……これみんなあなたので……」
ただで取られちゃった。入れ替わりに帰って来たかみさんが、それじゃあ八百屋さんが気の毒だというので、表に出ると向こうに見える八百屋に声をかける。
「今度埋め合わせをするから、唐茄子でも持っておいで」
と言うと、
「とんでもねえ、今度は玉と比べられる」
【成立】
明和9(1772)年『楽牽産』の「大根売」。享和3年蔦唐丸の『咄の開帳』にもある。三遊亭金馬(3)は、八百屋が大きな薬缶を持っていて、「薬缶を玉と比べる気だ」というオチ。今は練馬大根が普通で、あれと比べるとねえ……江戸期のものは青首大根など、細い物が主流だった。それが何と比べられているのか、うぶな私には全く分からない。