エプロンのポケットから柚香のスマホを…。
エプロンのポケットから柚香のスマホを…。陽織、「あっ、それ…。柚香の。」幸乃、スマホの画面から、、「真輝くん。うん。」そして、指でスワイプ。トン。4回目のコールで、「もしもし、おはようございます。真輝君だね。柚香の祖母の幸乃です。」丁寧に。スマホの向こう、真輝の声。「あ、はい。おはようございます。昨日はどうも。いきなりでビックリしました。…柚香さんのスマホからで…。」「いいえ~~。それより。」陽織を見て。こちらはスウェットスーツのままの…。さすがに寝起きのままの真輝。「えぇ。…今、愛実さんからも電話があって。…でも…、柚香さん、実は…、昨夜、陽織になってエンカントに…。」その声に瞬間、幸乃、ビックリして、「えっ!!!」そして、陽織を見て…。けれども何とか気を取り戻して、「そうだったのかい。お店に…。」真輝、「えぇ。1時前に…、亮輔。…あの…、柚香さんと同じ大学の…。」幸乃、「あぁ…、昨日、話してた…。」「あ、はい。」「その人もエンカントに行って陽織ちゃん来てるって、僕に電話あったんです。」「そうだったのかぃ。」スマホからの声、「…けど…。今朝は…、そのまま…、柚香さんには…。」真輝。「えぇ。…さっき、ご飯だからって…。妙に下に降りてこないから…。…で、部屋に行って、布団を捲ったら…。」「おばあさん…。驚かれた…。」その声に幸乃、動揺は隠せない。けれども、「え、えぇ~~。…まっ。けど…、話しは聞いてたから…。…そして、今さっき、ご飯を…。…けど…。この先…。」「そぅ…、なんですよね~~。」真輝、目をキョロキョロと…、そして、考えながらも、「ギリギリ…。…大学の方は…。休む以外…。」幸乃、真輝の声に、「そぅ…だね~~。…もし、万が一…。」瞬間、ふと脳裏に過った幸乃。「…2歳のまま…。」そして、スマホに、「待つしか…、ないようだね~~。柚香を…。」陽織、目の前の黒い大きな置物の中の3枚の写真を…、ただ、黙って見ている。幸乃に抱き抱えられたままで…。「さっき…。」幸乃。スマホから真輝の声、「えぇ。」「この子の、ご飯の食べ方見てたら。」「あ、はい。」「まるで、子供。…まっ。確かに、零したりはしないんだけど…。食べ方が…。がむしゃらで…。」真輝、思わず、「あ、あ~~。」「ひとりで…、外に出したら…。…体は…、こんな…。…けど…。」真輝、幸乃の声に、「あ、はい。…おばあちゃん。…大学の方には…。何とか…。」「えぇ。まっ、確かに、二十歳にもなって、保護者から大学側に休みの事をって言うのは…、大学にすれば…。」真輝、スマホ越しに、「えぇ…。…でも、この際。」一拍置いて。「そんな事は…、言ってられない。」「えぇ。…とにかく、待つことにするよ。」「お願いします。」幸乃、その、「お願いします。」の声に、思わず目頭が熱く…。けれども、ニッコリと、「ありがとうね。」「あ。僕も、時間を見て…、お邪魔…。」「うんうんうん。」幸乃。「ありがとうね。」そして幸乃、目をパチクリと…。「先生方にも、連絡。」「えぇ。…その方が…。」真輝、「分かりました。…あ…。愛実さんにも、僕の方から…。電話。彼女、びっくりして電話くれましたから。」「うんうんうん。そうしておくれ。愛実ちゃん、かなり心配してると思う。」スマホから、「はい。分かりました。じゃ。」「うんうん。わざわざ、朝早くからすまなかったね。」「いいえ。じゃ。」そして通話は切れる。幸乃、スマホを持ちながら陽織に。「陽織。」陽織、祖母に、「うん…???」「とにかく、何か、着替えといで。パジャマのままじゃ、なんとも…、まるで、病人じゃないかぃ。」笑顔で…。陽織も、その声に、自分の体をあちこちと…。「あ。うん。分かった。…でも…。」困ったように…。幸乃、そんな陽織を見て、顔を傾げて、「あっ。そ…か。…確かに。何着ればいいか…。」そして仏壇の前から立ち上がり、「おいで。」2階に連れて行って、柚香が普段家の中で着ている服を。「陽織、この服、覚えておいて。分かったかぃ。」陽織、そんな祖母に、「うん。」そして幸乃、またポケットから柚香のスマホを…。そして…。「いやいやいや。参ったわ~~。」そわそわとしている愛実。母親の作り置きの朝ごはんを食べて。「いつもだったら、頭が痛いって、起きるんだけど~~。開店前に店に行って…、家に帰って、今度は深夜にまた…。…で、今度は陽織になって…。…そしたら、今度は陽織になったまんまで…。」そこまで言って愛実。いきなり肩を落として、ガクン。そして…顔を思いっ切り崩して、「ユズ~~~。どこ行ったんだよ~~。…もぅ~~~。」そして、こちらは既に着替えて階段をドタドタと真輝。そしてリビングに。「かあさん。」キッチンで料理中の愛佳、「わっと。びっくりした~~。」「ごめん。俺、ちょっと出て来る。」いきなりの声に愛佳、「はっ???」 LIBRA~リブラ~ vol,110 エプロンのポケットから柚香のスマホを…。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※