草木染めウール糸
今日は新聞記者のフセインと、その記者仲間でアゼルバイジャン人の女性と、イェニキョイの馬牧場に朝食に行った。朝は寒かったのだけど、太陽が出てくると真夏の天気。長袖を着ていって、後悔した。馬牧場の朝食はおまけで、久しぶりにアイシェに会いに行くのがメインの目的であった。途中で飲みものと甘いモノをたくさん買って、アイシェの村へ。夕方からフセインの仕事があるので、あまり長居はできなかったけど、近況を報告しあい、おしゃべりをした。アイシェの織りかけの絨毯は、かれこれ3年が過ぎた。病気と忙しさ(今年、娘を嫁に出した)でとてもじゃないけど絨毯を織る時間がない、と言う。それでも村の他の織り手に手伝いが必要であれば、出かけていくが、体力的な問題もあるだろうが、自分の絨毯を織る気力がないようである。よく絨毯、キリムの織り手から、一度手をとめてしまうと、その続きをやる気がしなくなる、という話を聞く。気持ち的にはよくわかる。オーダーで締め切りが決まっているのと違って、自分のために織るものは続けて一気に終わらせないと、なかなか進まない。ところでアイシェの絨毯に使われている糸は、手で紡いだキリマン糸を村で自分たちで全て天然素材で染めたものである。糸染め作業は昔に比べて頻繁に行われなくなったので、最後の糸染めは一緒にやった。還元インディゴ以外は、村近郊の山や村内で自分たちで集めて乾燥させて準備した。黄色はエゼンテレと玉ねぎの皮、薄いサーモン色はピュレンオトにレモンの皮、濃い赤はピュレンオトの残り汁に赤いザクロの皮、薄い黄土色はアーモンドの殻、濃い黄土色は胡桃の殻、青はインディゴ、緑は黄色に染めた上に青をかけたもの。染めた後は四十の瞳と呼ばれる場所にある豊富な湧水の池で洗ったっけ。現在のトルコの草木染め糸は、通常、専門の染色工房で職人さんの手によって行われているものが、かろうじて残っているぐらい。それだってどこの工房が稼働しているか、数えられるほとである。アイシェとやった草木染めの作業も、「昔は一緒に草木染めしたよね」という想い出話になるのも時間の問題。いやすでになってしまっているのかも・・・。大きな釜を屋外で火にくべたり、乾燥させた素材を糸と一緒に煮込んだり、大量の媒染剤を入れたり、湧き水で糸を濯いだり・・・・・そういう光景ももう見られないのだろうか。にほんブログ村