宇江佐 真里 「日本橋本石町やさぐれ長屋」
日々カツカツ暮らしの長屋の住民達の物語。・6つの長屋の面々に起こるお話。・①時の鐘②みそはぎ③青物茹でて、お魚焼いて④嫁が君⑤箕屋町の旦那⑥店立て騒動・特に③の青物茹でて、お魚焼いてが好きです。・錺職人の亭主が浮気しちゃって、家に戻らなくなり離縁の危機・・・・女房の「おとき」が飲み屋で働くようになり、常連のお店勤めの手代に言い寄られ、江戸から上方へ行こうと誘われる・・・・口車に乗せられた「おとき」は、手代のつてで、幼い息子と娘を奉公に出してしまい身軽になります・・・・帰らぬ亭主にも見切りをつけ、邪魔な子供たちもいなくなり、手代と上方へ行く夜明け近くの朝・・・・奉公先から逃げて来た息子「作次」が母親の後を付け、体を張って母親「おとき」を止めます・・・・手代は息子に対して手を上げ罵り、邪険にする姿を見た「おとき」は、手代の下心がはっきり見え、目を覚まします・・・・「おとき」は息子と娘を奉公先からつれ戻し、今まで通りの暮らしをします。・息子は錺職人として亭主の親方に住み込み、亭主はその姿に浮気相手の女と縁を切り、「おとき」に詫びて家に戻る事になります。・「おとき」は今までの当たり前の暮らしに感謝します・・・・亭主の好きな青物茹でて、お魚焼いての暮らしがどんなにか幸せであるか・・・・宇江佐さんの言葉や情景や心情表現が目に見え、心に響くんですよねぇ。・息子「作次」が母親を上方へ行かせないと手代は歯向かう場面が泣けます。・親が子を想う気持ちと、子が親を想う気持ちの深さに、しみじみと感動しました。・これまた大好きな作品です!