乙川 優三郎 「霧の橋」
再々読。何度読んでも感動します。・・・・・・・・・・・・・・第7回時代小説大賞受賞作品主人公は紅屋惣兵衛。奉公人が数人しかいない紅のみ売る店の主人。実は惣兵衛は元は武士。16年前、妻を亡くしてから一人を通していた父親が、想いを寄せていた小料理屋の女将「ふみ」を庇い同僚の林房之助に斬られます。なぜ同僚と斬り合いになったのか・・・「ふみ」の正体を知る同僚「ふみ」とは一体誰なのか・・・謎を残したまま、足が不自由な兄に代わり、次男の惣兵衛が仇を討つべく放浪の旅へ出て、十年後江戸で仇を見つけ出し本懐を遂げますが、謎は分からぬまま。本懐を遂げ帰郷すると、兄は公金横領の罪で切腹させられていました。惣兵衛の家は廃絶。兄嫁と子供達は実家へ帰った事で絶縁。惣兵衛は領外追放。この先の見通しもなく江戸へ戻る惣兵衛。放浪の日々を送っていたある日、紅屋の一人娘「おいと」を暴漢から救った事が縁で結婚し、紅屋の婿となり刀を捨て商人となります。それから6年・・・惣兵衛の商人としての物語が始まります。父親の死。父親が想いを寄せていた小料理屋の女将との謎。紅屋を乗っ取ろうとする大店との闘い。大店との闘いの中、惣兵衛が武士を根底から捨てていなかった事が起こり、夫婦の絆が揺らぎ出します。夫婦としての信頼と絆は戻るのか。そこへ父親の想い人「ふみ」の姪から長年の「ふみ」の思いを綴った手紙を受け取ります。「ふみ」と父親の関係。「ふみ」の本当の正体とは・・・惣兵衛は大店との緊迫した闘いを協力し合う仲間と乗り切ります。その矢先「ふみ」が惣兵衛に果し合いを申し込みます。父親の仇を討たせようとの命がけの申し込み。惣兵衛は霧が深い朝、果し合いの場所である橋に向かいます。惣兵衛とふみの対面の場面からラストに向けての描写が素晴らしいです!感動的で名文です。霧と橋と夫婦の描写がとても素敵です。武士とは、商人とは、夫婦とは・・・男と女。親と子。商人としての信用。乙川優三郎さんの素晴らしい文章表現が目に浮かび美しい風景となり感動しました。何度でも読み返したい大好きな一冊です。