『マレーナ』　哀しい初恋

2005.09.04

カテゴリ：映画

『マレーナ』

戦争が始まって間もない1940年、シチリア。
13歳の少年レナート（ジュゼッペ・スルファーロ）は、
町一番の美女マレーナ（モニカ・ベルッチ）に出会う。

思春期を迎えつつあるレナートは、美しい年上の女性、
マレーナに心をときめかせ、憧れのまなざしで見つめる。

ある日、出征した夫を待つ彼女のもとに、
夫が戦死したとの知らせが。
未亡人になった彼女は、町中から、
好奇の目で見られるようになっていく。

まだまだ子供な男の子が、美しい女性を目にして、
早く大人になりたいと願う様子が、ほほえましい。

アソコの長さを比べたり、長ズボンを欲しがったり、
床屋でも大人と同じ席に座りたがったり。

夜な夜な妄想したり、彼女の部屋をこっそり覗き見して、
彼女が踊っていた曲のレコードを、手に入れたり。

彼女が歩くたびに、町中の男どもは振り返り、見つめる。
女たちは、下品だ売女だと、陰口を叩く。
そんな彼女を、まだまだ子供な少年は、ただ見つめるだけ。

「毎晩ろうそくも灯すし、毎週ミサにも来る。
だから彼女を町の人から守って！
僕が大人になるまで…」

少年は、誰かを愛し、その人を守りたい！と思った時に、
大人になるのだろうか…。

しかし、「唯一の罪」である美しさのために、
嫉妬と羨望の対象にされ、町を追われる彼女。

彼女を袋叩きにする女たちも怖かったけれど、
それを見ながら、誰も手を差し伸べようとしない男たちに、
背筋が凍る思いがした。

そして、戻ってきた彼女に、「目じりに皺が」「ちょっと太ったわね」
などと言いながらも、まるで何事もなかったかのように、
しらじらしく受け入れる、女たちのたくましさ。

戻ってきたのは、彼女の意思だったのだろうか。
それとも旦那が、何もやましいことがないのならばと、
連れ帰ったのだろうか。

どちらにしろ、堂々と胸を張って町中を歩く、
彼女の強さが、美しかった。

ドタバタチックな中にも、少年の非力さを悔やむ哀しさ、
そして戦争の悲惨さで、涙腺の緩む映画でした。