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五感の働きとしての「感覚」は、基本的に「生まれつき」です。
でも、「味わう」という感覚の働きは、育ちの過程で育つものです。 なぜなら、この「味わう」という感覚の働きは「心の働き」と密接につながっているからです。 「味わう」という能力がなくても、人は生きていくのには困りません。でも、「味わう」という能力がないと、人は「人生」を楽しむことができません。「幸せ」を感じることも出来ません。 でも、「味わう能力」を育てることが出来ないまま大人になってしまった人は、「味わう」という感覚世界があることを知りません。説明しても理解出来ません。 確かに、そのような人でも「味」は分かります。 「食レポ」のように、「美味しい」とか「不味い」という判断も出来ます。 そしてそれが「味わうこと」だと思っています。 でも、「おいし~」という「心に響く感覚」が分からないのです。 テレビなどで「食レポ」をやっている人がやっているのは「味の分析」であって、心で感じる「おいし~」という感覚とは別のものです。本当に味わっていたら言葉化など出来ないはずだからです。 極端なことを言えば、機械にだって食レポは出来るのです。 「おにぎり」で有名な佐藤 初女さんという方がいらっしゃいます。 ウィキペディアには 佐藤 初女(さとう はつめ、1921年10月3日 - 2016年2月1日[1])は、日本の福祉活動家、教育者。1992年より青森県の岩木山山麓に「森のイスキア」と称する悩みや問題を抱え込んだ人たちを受け入れ、痛みを分かち合う癒しの場を主宰。それ以前は弘前市内で自宅を開放して同様の活動をしており、こちらは「弘前イスキア」と呼ばれていた。素朴な素材の味をそのままに頂く食の見直しにより、からだから心の問題も改善していくことができると訴えた。 と書かれています。 (2016年2月1日に94歳で亡くなったようですが、90才の時に「これが最後になるかも・・・」と知り合いが企画した講演会でお会いしたことがあります。その後も、「これが最後かも講演会」が何回も行われたようですけど、お元気な方でした。) 初女さんの所には、心やからだが病んだ人達がいっぱい来たそうです。初女さんはそんな人達に、心を込めてにぎったおにぎりを振る舞ったそうです。 昨日私は、名古屋で「天むす」(天ぷらが入ったおむすび)を買って食べましたが、そんな贅沢なものではありません。梅干しを入れ、ノリを巻いただけの素朴なおにぎりです。 でも、このおにぎりを食べただけで泣き出してしまった人がいっぱいいたそうです。 五感の働きとしては「おにぎり」は、口の中にある「味覚」で味わうものです。でも、多くの人がこのおにぎりを「心」で味わったのです。初女さんの「おにぎり」には「心に響く味」があったのでしょう。 同じようなことが、視覚や聴覚でも起きます。 絵を見たり、音楽を聴いたりして、感動したり、泣いたり、幸せを感じる人もいます。 このような現象は「五感の働き」だけでは説明できないのです。 でも、今、そのような感覚が萎えてきてしまっている人が増えてきているような気がするのです。 バックパッカーとして旅をしていた若い頃、ルーブルにも行きましたが、絵の前で立ち止まって、何分も、何分も絵と対話している人が何人もいいました。 でも、ツアーで来ていた日本人観光客はみんな、確認し、説明を聞いただけで、次の絵に移動していました。 団体行動が原則のツアーでは仕方がないことなのかも知れませんが、小さい頃からこういう活動に慣れてしまっていると、「味わう」という能力が育たなくなるのは明らかです。 学校の授業でも絵を見たり、音楽を聴いたりはしますが、作者の名前や、作品名を覚えることが目的であって「味わう」ことが目的ではありません。 物語や小説を読むこともありますが、これもまた、「文章を理解するためのもの」であって、「味わうためのもの」ではありません。 ですから、「自分が感じた通り」に感想文を書くと×になります。 さらに、ストレスを抱えている人、自分と向き合うことを避けている人、欲望に振り回されている人、不安が強い人、人目ばかりを気にしている人、いつも追い立てられている人、心やからだが疲れている人は、この「味わう」という能力が低下しています。 人はそういう状態になると、何を見ても、聞いても、食べても、心が動かなくなります。 すると世界が灰色に見えたり、食べるものが味気なくなったりします。 そして、今の日本には、そんな状態の人がいっぱいいます。 でも、そんな人でも、初女さんの「おにぎり」との出会いのように、「心で味わう」という体験が起きると、「自分」を取り戻すことが出来るのです。それが感動になります。そして人は変わります。 絵でも、音楽でも、お料理でも、「味わう」という心の働きは、「自分との出会い」をもたらしてくれるのです。 ちなみに子どもは、この「味わう」という能力を、お母さんやお父さんとの何気ない日々の中で育てています。 安心と静けさがあるゆったりとした時間の中で、「美味しいね」「楽しいね」「嬉しいね」「いい匂いだね」「気持ちがいいね」と、お母さんやお父さんと感覚を共有しながら育っていくのです。 こういう関わりが、子どもの「五感の働き」と「心の感覚」をつなげてくれているのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
炊きたてご飯さん
>以前はテレビを常につけっぱなしの実家でしたが、 >おもしろい孫達の言動を味わうために >訪ねるとテレビを消しておりますね。 ----- 子どもでも大人でも、関わり合いが「感覚の育ち」を促すのですよね。 (2017.04.24 08:50:20) |