「今必要なのは、〝楽しい〟を伝える子育てと教育」
私は、出生率が減っているのも、子育てが辛いと感じる人が増えているのも、現代社会が「子育て」を、「母親の義務」「母親のお仕事」に変えてしまったからだと考えています。実際、お母さんたちに話を聞いても、「子どもと一緒にいるのが楽しい」「子育てが楽しい」と言う人は少ないです。そして、ほとんどの人が「子育ての楽しさ」ではなく「子育ての辛さ」を語ります。そういう状態では出生率が減ってくるのは当然の結果です。いくらお金をばら撒いても無駄です。また、そういう気持ちのお母さんに育てられている子も「生まれてきてよかった」という気持ちよりも「生きるって辛いんだな」という感情の方が強くなるでしょう。そして「楽しいを感じる能力」よりも「苦しいを感じる能力」の方が高くなるでしょう。そして「子育ての荒廃」は「社会の荒廃」に直結しています。本来、「子育て」は権利であって義務ではないのです。「母親だけの仕事」でもありません。「子どもの育ち」は社会全体で支えるべきものです。それは、「勉強」や「学校に行くこと」が「子どもの権利」であって「子どもの義務」ではないのと同じです。そして、子どもの「学び」は学校だけでなく社会全体で支えるべきものです。学校だけを「学びの場」にしてはいけないのです。「どういう所で何を学ぶのか」ということも含めて「子どもの権利」なんです。大人には子どもに対して「学ぶ場所」や「内容」を提供する義務はありますが、「学ぶ場所」や「内容」を固定して押し付けてはいけないのです。そんなことをするから、学校嫌い、勉強嫌いの子が増えてしまうのです。それは、メニューを見せずに料理人の都合だけで、みんなに同じ料理を同じ量だけ食べさせるようなものです。学校の先生たちも同じです。いま、「教師としての喜び」「教師としての誇り」「子ども達に色々なことを伝える楽しさ」を語る先生が減ってきました。先日も、「学校が子どもたちのための場になっていないのが辛くて、教師を辞めた」という人と会いました。実際、教師になりたい人がどんどん減ってきています。子育ても、教育も、社会全体の問題なんです。お母さんだけの問題ではないし、先生や学校だけの問題ではないのです。そしてその社会全体の状態に大きな影響を与えているのが政治やマスコミなんですが、でも政治家もマスコミも自分たちのことしか考えていません。政治家は「票が取れればいい」、マスコミは「視聴率が取れればいい」ということしか考えていないようです。だから、私たちは「子どもの育ち」や「自分の生き方」を守るために、「自分の感覚で感じ、自分の頭で考え、自分の意思で判断し行動する能力」を育てる必要があるのです。そうでないと流れに巻き込まれて、「自分」を見失ってしまいますから。子育てや教育で一番大切なことは、「生きるって楽しい」「学ぶって楽しい」ということを子ども達に伝えることです。それが出来たら、あとは見守っているだけで大丈夫です。でも、その「生きるって楽しい」「学ぶって楽しい」ということを伝えるためには「自分の感覚で感じ、自分の頭で考え、自分の意思で判断し行動する能力」を育ててあげる必要があります。自分の感覚で感じ、自分の頭で考え、自分の意思で判断し行動するから楽しくなるのです。「生きるって楽しい」「学ぶって楽しい」ということを知らなければ、簡単に、「生きる権利」や「学ぶ権利」を放棄するようになってしまいます。そして「子育て」や「学ぶこと」や「生きること」が苦しくなります。