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テーマ:酒類業界の打ち明け話(24)
カテゴリ:業界ネタ
などという過激なタイトルをつけてしまったが、さすがにそれは大袈裟だとしても、
「飲み放題」にはあらゆる立場から見て、メリットよりもデメリットの方が多いのではないか、 というのが私の考えるところだ。 まずお客さんの立場からすると、価格設定や出されるお酒によって違いはあるものの、 実際にはモトがとれて無いことも多いと思われる。 もっともそれでもこれだけ「飲み放題」のニーズが高いのは、 ひとえに「分かりやすい」とか「金額が決まっている」という安心感から来るものだろうが。 実際あまり詳らかにすると差し障りがあるが、飲み放題で出されるお酒というのは、 モノによってはかなりヒドいものだったりする。 ビールなどはあまり差のつけようがないが、日本酒に焼酎、ワインから洋酒に至るまで、 飲み放題プランでは普段のその店の定番酒とは違う、かなり低クラスのものが出てくるのが常識である。 そんなものをたらふく飲んだところで、真に満たされたとは言い難いのではないか (何を飲んでも一緒、という方は別だが)。 そして提供する店側、これは常に原価とのせめぎ合いの中で、 常に冷や汗をかいているところが多いかと思う。 実際、飲み放題なんてしたく無いのに、周りが皆やってるから対抗上仕方なく、 というところが大多数ではないかと思う。 そういうお店に商品を卸す我々リカーマンや、そのまた川上の卸問屋やメーカーもまた、 それに振り回されている。 お店側から「飲み放題にしなきゃいけないから.....」と言われると、 それは即ち「単価を下げろ」という無言のプレッシャーであるか、あるいは 「もっと単価の低いものを探して来い」という要請なのである。 それを言われる我々としては、「飲み放題なんて、しなきゃいいのに.....」と思うのだが、 そこはやはりむげには出来ない立場なのである。 そして今度はまた別の角度から見てみたい。 「飲み放題」は、飲食のモラルの崩壊の序章なのだ。 私は仕事上、宴会の行なわれたお店の空瓶を日常的に回収しているが、 ほとんど中身の残ったビール瓶の何と多いことか! 飲み放題なのをいいことに、飲めもしない分までどんどん栓を開けさせてるというのが看て取れる。 もちろん栓を開けようが開けまいが、お客さんの払う金額は変わらないから、 こうなるとお店側は丸損である。 自分たちの飲める分だけオーダーする、という原則に立てば、いかに「飲み放題」という、 店側の容認したシステムであるとはいえ、こんな勝手がまかり通っていいものかと、 お店から回収した空瓶に残っているビールをじょぼじょぼと捨てながらいつも思う。 そしてそれはやがて、彼らの子どもにまで伝播するだろう。 以前あるレストラン経営者から聞いた話だが、最近のファミレス的な店では、 「ドリンクバー」のある店が多い。 言ってみれば「飲み放題」と同じだ。 ここにたむろする高校生たちを見てると、皆が皆そうではないと思うが、ムチャクチャに あれこれ注いでは、飲み切れないといって平気でジャブジャブ捨てたりしてるのが多いという。 これが本当なら、モラルのカケラもあったものじゃないが、 その源は案外その上の世代にあるんじゃないだろうか。 そして最後に最も重要な話。 大量摂取するとカラダに与える影響が大である「酒」という飲み物を、「飲み放題」にするということ自体、 ともすれば無茶な飲み方を誘発しやしないだろうか、という懸念がある。 あくまでも「酒」そのものを悪者にしないためにも、消費者に過剰な不便をかけない範囲内で、 酒の扱いを検討し直すべきだと思うが、「飲み放題」を自粛したところでそれは「過剰な不便」には当るまい。 「飲み放題」は、「百害あって一利なし」とまでは言わないが、 多くのデメリットに比べると、メリットなどホンの少しだと思う。 消費量が増えて喜ぶアルコールメーカーの他には、 宴会の幹事さんとお店のレジ係が、ちょっとばかし楽になるという程度だろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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