増補改訂 アースダイバー 中沢新一 再々々々々 講談社
彼らは、自分たちがその上で暮らしをいとなんでいる大地は、もともとがふるふると揺れている鯰や龍の背中に乗っているような、じつに不安定なもので、鯰や龍がなにかの拍子にからだをひと揺すりするだけで、背中の上でくりひろげられていた平穏な日常生活などは、ひとたまりもなく崩れさっていくものだ、という感覚をもって生きていた。 そういう感覚をもった人たちにとって、自然のふるう怪力は、自分たちの世界の外のものではありえなかった。そもそも人の暮らしそのものが、怪力をひそめた自然に包まれるようにして、つつましく過ごされていた。人の暮らしは自然の怪力と無縁であるどころか、その怪力の背中に乗っているものだから、人生は不確かで、不安定なものに感じられていたのである。 だから、彼らは地震のような大災害に見舞われても、ただ呆然と悲嘆にくれているのではなく、もうつぎの日の朝になれば、ふたたび鯰や龍の背中の上に、自分たちの新しい生活を建て直すべく、せっせと働きはじめたのだった。増補改訂 アースダイバー [ 中沢 新一 ]価格:2,530円(税込、送料無料) (2024/5/10時点)楽天で購入