「自分の頭を叩く男」
「自分の頭を叩く男」困ったことがあると、自分の頭を叩く男がいる。右腕に力を込めて、頭をこめかみを頬を思い切りやるのだ。何故そんなことをするのか。彼は言う。自分をおとしめたいのだ、と。ヒトから堕落したい。ゴミになりたい。ゴミになると成立する、と。ヒトである自信を持て余すんだと。彼はその行為が見苦しいと知っているらしく、殴るときはベランダに行く。しかし、彼よ!君の殴る鈍い音は誰かを殴っている音なのだよ。ずるいではないか。君の痛みより、何倍も何十倍も何百倍も痛い人がいるのだよ。知っているのか。知らないのか。アピールだろ?全世界に痛みをアピール。「石ころ帽子」をかぶる勇気もない癖に。7階だろ?どうだい?そこから飛び降りては?それが出来ないなら、ゴツン、ゴツン、ゴツンの音を黙して飲み込めよ。誰かいるんだろ?その音を聴いてくれる誰かがいるんだろ?それは奇蹟だよ。まんざらでもないんだよ、セカイは。400年も生きてきた俺が言うんだから間違いない。誓えよ。愛する人の前で。誓えよ。もうしないって。