『ワールドビジネスサテライト』&「Qサポネット」
詳しくは書けないが、実は本日、高速ツアーバスの新高速乗合バス移行に向けた準備作業が一つの大きなヤマを越えることができた。紆余曲折ありながら、最後にはご理解いただいた多くの関係者の皆様にあらためて感謝。なるだけ早く残りの細かい作業を終わらせ、高速ツアーバス各社は「仮」の状態で提出している乗合許可申請を差し替えねばならない。移行完了期限(7月31日出発の昼行便まで。同日の夜行便は乗合での運行が必須)までに残されている時間は極めて少ない。合わせて、高速ツアーバス連絡協議会自体も、解散に向けて動き出す。あらゆる面で、カウントダウンが聞こえ始めた印象がある。一方、メディアの報道も潮目が変わったようだ。実は本ブログの更新をさぼっていた間に4月29日付『日経MJ』でコメントをご紹介いただき、4月30日のテレビ朝日系『モーニングバード』にスタジオ生出演させていただいたのだが、その時点ではいずれも事故1年という節目に当たって、事故以後の1年を振り返る報道だった。一方、本日、テレビ東京系『ワールドビジネスサテライト』の特集「高速バス新時代 勝ち抜く条件は?」では、論調に少し変化があった。いかにも同番組らしく、制度改正を踏まえて各社の戦略を紹介いただいたという内容。一言で言えば、昨年の関越道事故以来、高速バスがテレビで紹介される際に事故の映像が流れなかったのは初めてではないか。決して事故を忘れていいわけではなく(というよりも、あの凄惨な映像は一生忘れることはできないだろう…)、一般利用者はともかく業界内では絶対に事故の記憶を風化させまいと決意を新たにするとともに、ようやく業界の今後についてご紹介いただけるようになったことにほっとしたのも事実。本番組の取材には最大限ご協力した上に、VTRには私自身も登場させていただいた。紹介されたのはいずれも、ご相談を受け私からご提案させていただいた3社(実は他に2社ほどの取り組みも提案していて、私としてはそちらが本命だったのだが、テレビ的には面白くないネタだったようで取り上げられず残念)。また私自身は高速ツアーバス側(海部観光)にアドバイスする立場で登場したが、本音を言うと「本業」である高速乗合バス側と販売戦略を考える立場で出たかった。もっとも、ディレクターさんと一緒にあれこれアイデア出しをした際、たとえ私のお客様に当たる事業者とて、そのようなシーンを撮影させてもらえそうな会社は思い浮かばず……別に私自身がどうこうということではないが、こういう話をチャンスととらえて取材対応も柔軟にかつ積極的にお願いしたいのだが。さて先週金曜日に徳島の海部観光に定例訪問(かつテレビ取材)を済ませた後、翌土曜日は福岡へ。「地域と交通をサポートするネットワーク in Kyushu(Qサポネット)」で講師役をおおせつかったのだ。九州地区を中心に運輸局、自治体、大学の先生そしてバス事業者の担当者など70人以上にお集まりいただいた。講演では、参加者がどちらかというと高速バスというよりは地域交通という切り口の方が多いゆえ、新高速乗合バス制度の(「既存組」事業者にとっての)具体的な活用法については「さわり」程度にとどめ、むしろ高速バスの件をツマミにして地域交通のあり方に問題を投げ込んだつもり。大井先生が設定したグループ討議のお題も、あえて高速バスの話ではなく、「バス交通を残すためにどうすればいいか?」。各班からの発表は大変興味深かったが、特に兵庫県豊岡市の事例などが興味深く、「住民、自治体、事業者の間で明確な目標設定をする」ことの重要性と、それを容易に実現するために「小さくてもいいから成功体験」と「それを語れる人物」の必要性をあらためて痛感した。本番で話が高速バスから逸れた代わりに、夜の席では、九州島内の高速ツアーバスや会員制バスの今後と、レベニューマネジメントの話を中心にご質問攻めに。私が10分オーバーして80分講演し、さらに主催者の大分大学・大井准教授に20分補足していただき、その後90分のグループ討議がプログラムされていたものの、議論は懇親会、そして二次会さらに…と続き、予約していたホテルに深夜2時過ぎに着いたら既に玄関が閉まっていて…(まあ九州出張はいつもそんな感じではあるが)。熱い議論に、「既存組」乗合バス事業者の、地域公共交通を守るという使命感をあらためて実感する。ただ、「平場」の乗合バス輸送人員がピーク期(「バスの黄金時代」と呼ばれる昭和30~40年台)の4割にまで減った(「4割減った」ではない。「4割にまで減った」である)今、もう使命感だけで事業を継続していくことは難しい。大井先生がうまくまとめられたように、「現実と向き合う」勇気が今、求められている。例えば2年半前、国土交通省が「バス事業のあり方検討会」を招集し、高速バス制度について議論を始めた際、いったい誰が、近い将来において本当に高速乗合バスと高速ツアーバスが一本化され、「幅運賃」や「貸切バス型管理受委託」が生まれることを想像したか。一体誰が、「停留所の権利」が高速ツアーバス側に開放され、高速ツアーバス各社が乗合許可を取得する図を思い描いていたか。今回の業態一本化は、現実に目の前に見えている図に囚われることなくゼロベースで追求すれば、あるべき姿は必ず実現するという「小さくても成功体験」となりつつある。あとは、時間との競争だけだ。高速ツアーバスの新高速移行のように期限が2ヶ月後とは言わないが、彼らを迎え撃つ「既存組」高速乗合バスの準備も、そして地域公共交通としての「平場」の乗合バスのあり方を見つけることも合わせ、バス産業(特に既存事業者)に残された時間の余裕は、そんなに大きくないはずだ。