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長押 綴

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2010.03.07
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カテゴリ:.1次題
蜘蛛の糸の先、雲の上。果たしてそこは本当に極楽なのか。
上を見ないで切れたカンダタは、上に望みだけを抱いて落ちたカンダタは、もしかしたら幸せだったのかもしれない。




叡一と右京と伊織、そして俺藍彦。俺達は小学校の時から親友同士だった。
特に叡一は浮き沈みが激しい奴で、俺達はよく叡一の憂さ晴らしに付き合ったり悩みを聴いたりしていた。

その浮きの理由は様々だったが、最近は叡一の彼女、和音ちゃんについてのことが多かった。
…親友の彼女を悪く言いたくはないけれど和音ちゃんは傍から見ても怪しい子だった。笑顔が嘘くさい子は苦手だ。
そういう子は平気で人を虐める。裏切る。……そういう奴を見たことがある。
だから恋をしたら盲目な叡一が俺達は心配だった。

そんな時だ、俺達が和音ちゃんから相談をされたのは。

「もう限界なんだ」
「別れるか、あたしか叡一が変わるかしないと、もう無理」

素直で単純一途な叡一と虚勢を張って収拾がつかなくなってしまう和音ちゃん。
和音ちゃんは自分をよく見せようとしていて、叡一の望むように動き、望むように努力し、それがかなわなければ嘘をつき続けることで関係を保っていた。

「和音はもう頑張れないんだろ?」
「…でも和音ちゃん、自分で自分の嘘を全部叡一に言えるの?」
「……む、り」
「だよねえ」

右京と伊織は和音ちゃんに親身…というか近距離で相談を聞いていた。俺は静観。
こういう時は誰か一人は冷静でないといけないから。
……叡一も不在だから、あまり話と感情を進めすぎてもよくないだろうし。

見ている内に右京と伊織の中では叡一と和音ちゃんを別れさせることこそが正解だと決定したようで、なんとその場で叡一に電話をかけ始めた。

……物事は悪い方、悪い方へと転がっていくようで、その押しつけがましさというか上から目線の説得が素直な叡一に効く筈もなく、和音ちゃんと叡一の話をしていた筈が気付けば叡一と右京、叡一と伊織の関係の話へと転がっていた。


『もうほっといてくれよ、お前らは関係ないだろ』
「あんだよ!和音ちゃんから相談受けたのは俺らなんだけど」
「俺達はお前の為を思ってだなあ…」
「はいはいストップストップ」

ここで止めても多分悪化するのは止められないと思ったが、目の前で物事が変化してる以上最低限は面倒を見なきゃいけねえだろう。

『藍彦!?』
「わり、切るわ」
「あーっ!」
「邪魔すんなよ!」
「今日はこれくらいにしとけ。和音ちゃんも、いいよな?」
「え、う、うん」

二人に睨まれたが和音ちゃんは少しほっとした顔をしていた。
この子もまさかここまで悪化するとは思ってなかったんだろう。

「…和音ちゃんごめんね、あいつ頑固でさあ」
「会話になんなかった」
「う、ううん、いいの、ありがとう」

会話にしなかったのはお前らも同罪じゃねえのと思ったが言わない。
俺は怒ると洒落にならないと言われるから、叡一に怒る義務はない。だけどどちらかの味方をする権利もない。

「……続きはあいつが和音ちゃんと話した後にしようぜ」

元々俺達は相談を受けただけなんだから、と言うと二人は渋々頷く。ぜってー納得してないんだろうな。
この二人も友達思いではあるんだが…。

「二人があいつのことを思って言ってるのはあいつも分ってるだろうし」

三人とも我を張ってることは自覚してるだろう。
三者三様に溜息をつく彼らを見て、俺も心の中で嘆息する。

ま、なんとかなるだろう。
これまでだってどうにかなってきたんだ。


そう思うことに俺はした。


だが、そう思うことにしてから一か月、二か月、三か月…半年、一年。


あの後に更に追撃連絡をしたらしい二人は叡一と絶縁することになり、和音ちゃんと叡一はよりを戻し、気付けば何故か俺が叡一の相談とかのろけを聴く役目になっていた。 


和音ちゃんは未だに無理をしたままだし、叡一は未だに和音ちゃんに対し見当違いの気遣いをしたまま。俺はそれに気付いているが言うことはない。


結論。

本音で付き合うというのは理想なのだ、結局。
だからこそこれだけの距離は必要で、そうして本音に焦がれながらも、善意の偶像に縋って登りながらも、永遠に下に引きずり込まれ続けることが幸福なのだ。

なればこそ。
叡一は和音ちゃんの嘘を見逃し、和音ちゃんは叡一の理不尽な望みにも付き合い続けるのだ。
その関係は例え傍から見ていびつでも、第三者は口出しできない…してはいけない。


だから俺は今日も、信じようとする叡一と、喜ばせようとする和音ちゃんを見守っている。
時々助け船を出しながら。


……子供が出来たら、付き合いが二人だけのものでなくなったらどうするのだろう、と俺らしくもない余計な心配をしながら。





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最終更新日  2018.01.09 04:25:27
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