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長押 綴

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2012.06.18
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カテゴリ:◎2次裏書
あの人が私達の前から姿を消したのは二度目。

あの人を殺したそいつ、そしてその二度を彷彿とさせるそいつ、また皮肉なことに集団での役割さえ被っているそいつに、私は嫌悪とも、同情とも、怒りとも悲哀ともつかない感情を抱いていた。




あの人を殺したのはそいつだった。
そいつはリーダーで、攻撃した私達の仲間はそいつの仲間に銃を向けられて、だから復讐なんて諦めるしかなかった。
それでも私達にはその殺人鬼に頼るしか方法がなかった。

希望が減っていく毎に神経をすり減らしていた。
人に会えないで時間が経つ毎に神経をすり減らしていた。
食べ物が増えていく毎に管理するため神経をすり減らしていた。
行き場が減っていく毎に神経をすり減らしていた。
仲間割れする毎に神経をすり減らしていた。

そんな状況で、同居を提案し、仲間を増やし、仕事を分担し、食べ物を共有し、住処と仕事場を教え、仲間の団結意識を高めたのがそいつだった。

だからそいつらだけを追い出せた時はほっとした。あの人の敵をやっと討てたと思ったし、ようやっと安心できる居場所を確保できたと思った。いくつかうまく回らない出来事はあったけど、人数とノウハウと代わりのリーダーによってなんとか集団行動の形を保つことは出来ていた。

けれど、そいつの相棒はそれを逆転して語る。

助けてやったのに、恩を仇で返すようにして乗っ取った、と。
だから幻覚でばらばらにされたのなんて正直自業自得なのに、相棒は助けに入った、だからそれを称えるべきなのだと。

……そいつが何も主張せず、ただ黙々と助けるから、よけいにそいつの相棒は声高にそれを語る。
……だけど、相棒が口喧しく恩着せがましく言ってくるからこそ、そいつは無言で居られるのかもしれなかった。

まるで異教徒同士の争いのように、私達の主張や信念には隔たりがあった。




そいつらが外国から人を連れ帰り、更に仲間の一人の子供が冷凍睡眠から目覚めるきっかけになった時は、そいつらは一時的に英雄のように扱われていた。

あの殺人事件や恐怖政治から時間が経っていたこともあって、そいつらが嫌いな私達でもそれをある程度受け入れることは出来た。……そいつらが、もう問題を起こさないだろうという信頼もあった。船を託した私達……より正確に言えば、私達のものでもないけれど……の、期待にそいつらは見事にこたえてみせたのだ。

それなのに、そいつらはその信頼を裏切った。







「……もしも、あいつの親友が生きていたとしたら」
「私達、あいつを許せなかったと思う」

不幸により贖われる不幸。
死によって贖われる死。

悲劇を共有しているからこそ、同族として認め、許容出来ることがある。






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最終更新日  2018.02.13 05:03:47
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