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長押 綴

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2012.06.30
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カテゴリ:◎2次裏書
オカンの顔をワイは知らん。
ただ毎朝オカンの眠る墓にオトンと墓参りに行ってから、オトンを残して『ガッコウ』に行く。『ガッコウ』が終わったらオトンの所に戻って、疲れてたらそのまま寝て、たまにオカンの夢を見て、いつももぐりこんだ覚えのない布団の中で目が覚める、それが日課。
ワイは随分と恵まれている方らしい。





オトンはオカンの骨を担いで奈落の底からこの地上に登ってきたらしい。
ワイがこの世界で起きる少し前のことや。

「オトンは…再婚せえへんの?」
「……なんでやねん。相手もおらんのに」
「あの娘がおるやんか」
「あの娘は…ちゃうねん。そういうんやないんや」
「ふうん…」


ワイの言葉は関西弁と言うらしい。
もうとうに滅びてしまった場所の言葉やけど、文化として残すのにはええかもしれんなと言われとったからワイのこの言葉は誇りでもある。
ワイを育ててくれたオトン、外国から来てワイの体の治療をしてくれたおじさん達が使ってた言葉やから根付いただけやけどな。

ワイの他に、自分をウチと呼ぶねえさんや、自分を俺と呼ぶオトンも、大事に大事に保管されとる『遺書』の書き手も、関西弁を使うとる。やからこの言葉を使い続けるのはさほど大変やない。

自分をワイと呼ぶのはワイくらいのもんやけど、個性があってええんとちゃう?といつもワイは思うとる。
個性。大抵の尖った特徴を正当化する言葉やな。


ワイのこのろくに動かん足も、村でハブにされとるあの子も、皆個性豊かや、それだけのこっちゃ。







村に一人爪弾きにされた子がおると、それだけで集団は結束する。
爪弾きにされた子の面倒を見ればそれだけで『やさしいひと』扱いや。


ワイははじめ『やさしいひと』として褒められることが嬉しかったから、その子によく話しかけた。






ワイと一緒に眠っとったあと二人は助からなかったらしい。
その分の幸運をワイはもらっとるのかもしれん。
やったら、その分で誰かを救わんと、貰うばかりのやさしさでパンクしてしまいそうやった。







『…いくな』

『…いかないでくれ』


小さい頃からたまに見る夢がある。
流星群が綺麗やから皆で眺めとるのに、その静寂をぶち壊して何か大きな地鳴りみたいな音がする、そんな夢。

怖くて、いつものようにオトンを探して墓場の近く車椅子キコキコやっとったら、なんやオトンと誰かが凄い勢いで墓場の裏手に駆け込むんや。

どないしたんやろ思うて覗き込むと、黒と赤の石焼き芋みたいな何かにオトンと誰かが必死で呼びかけとる。

『逝かないで』

更に言うならその黒と赤の塊には、白くて半透明の、綺麗な靄みたいなんがまとわりついとって、小さいワイは、ああ大事そうに抱えとるんやなあ、なんて思う。

そんな夢を話すとみんな酷い顔するから、いつのころからか言わなくなったけどな。
「そんなん忘れてええんや」

特にねえさんはそんなワイをぎゅっと抱いてぼやく。心配かけてしまうのは本意やなかった。

……今にして思えばそれは、俺らが幼い頃亡くなったあの子の父親の最期やった。
 そして、……その人の相方の最後のまともな姿やったのかもしれん。

















「許さない」
「勝手にそっちに逝くなんて」









「頼むから」
「勝手に連れて行くな」











「つれて…いくな」

「…つれていかないで」


『--には、手を出さないで』

「……出さない。出せるわけ、ない……」

『……』

『……』

『……ごめんね、--……』

『もう少しだけ、頑張って』






こちらの夢は、誰にも言ったことがない。





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最終更新日  2018.02.11 00:19:04
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