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畜生名前を奪われた。
俺の名前を奪われた、大事なひとに貰った名前を。 駄目だ、もう人では居られない。化け物に戻ってしまう。 依代を。依代をくれ。化け物として扱われない為の器を。 畜生その名前で呼ぶな。化け物の名前で呼ぶな。 もう駄目だ、俺は戻ってしまう。 「魔王、これで最後だ!」 「魔王様!お逃げ下さい!」 うるさいうるさいうるさいうるさい、 お前ら全員名前がある分際で俺の事を魔王と呼びやがって。 なんでよりにもよって勇者に魔王の名前をつけるんだ。 俺の名前を返せ。 * 名も無き魔王は倒された。 その墓はとてつもなく巨大なものだったが、そこにはやはり「魔王」としか書かれていなかった。 彼は彼であるがゆえに魔王であったが、魔王であるがゆえに彼であるということを彼は受け容れきれなかった。 受け継がれる名前など彼にとっては呪いでしかなかったのに。 「 」は『 』を殺した。 魔王は、魔王を殺した。 生まれ変わった。 何年も何年も前に、勇者として生まれ変わることにした。 魔王の座はもう捨てた。目の前の『 』はただの抜け殻だ。 中身はここに居る。 「 」として生きている。 もう大丈夫だ。 そう思いながら、彼の餞として城も敵も仲間もみな燃やした。 これで俺はもう勇者ですらない。 ただの「 」だ。 ざまあみろ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.03.08 02:19:49
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