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彼女はいわゆるお嬢様だった。
だから僕は彼女のところで働くことになったのだ。 お嬢様はわがままで気まぐれでどうしようもない。 だけど僕が今日もこの世に居られるのはお嬢様のおかげだ。 それに、僕の名前を決めたのもお嬢様。 僕の生き方がそこで決まったのだ。 お嬢様は最近何かで悩んでいるようだ。 お嬢様のお父様が用意した縁談を断るに断れないのだと言う。 お嬢様が楽に生きてこられたのはお父様のお蔭なのだからきかないわけにはいかないのだと。 「相手の人が、どれだけいい人だろうと」 「わたしなんて空っぽな奴を気に入るわけはないわ」 だから名前のないお前がすきよ、とお嬢様は僕を抱きしめる。 お嬢様は空っぽしか愛せない。 だから僕は肋骨の間の空洞をもってお嬢様を迎え入れる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.08.20 00:56:31
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