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「あら「大丈夫「ご飯食べられる「もうそろそろできるわ」
突然かけられた、場違いなほど明るい声の洪水にびくりとする。 「ありがとうございます」 それに対し、高橋先生の代わりに返事をするリーダーの田中。 震えの止まらない高橋先生のかぶっているスーツに、驚かせないように触れて「晩御飯食べられそうですか」と訊く。 「だ……大丈夫、だ」 数秒後、やっと帰ってきた声は、全く大丈夫ではなさそうで。 「……じゃあ、ちょっと食べましょうか。全部が大変だったら、俺が残り…」 「そっ、そんな破廉恥なことできるか!!」 破廉恥が口癖なのか。 そう思うが、突っ込まないことにする。 「よし、じゃあ行くか」 「うん……ん?」 佐藤が何やら、気付いたような表情で急に固まる。 「どうした?なんかまた面白そうなもんでも見付けたのか」 なんでも面白がるのはいいけど、暴走すんじゃねーぞ。そう続けようとすると、「うん」と思った以上に強い声で返される。 「……晩御飯」 「お、おう」 「僕も手伝いたかった……っ」 「は?」 何を急にこいつは目覚めているんだ。 普段食とか全然気にしなさそうなこいつが。いったいどうしたんだ。 「食材解剖手伝いたかった……っ」 違った、いつも通りだった。 「……料理っつったって、あれだろ?缶詰だろ、ここにもともとあった」 あのばあさんたちも確か、食材はわざわざ出かけなくてもありますよと言っていたような気がする。 「いや、……」 佐藤が突然トーンを落とす。今度はなんなんだ。 「……」 「あ?聞こえねーよ」 こいつと居るとどんどんヤンキーみたいな口調になっていくな俺。たぶん大体佐藤のせいだ。 そう思いながらも、佐藤の口元に耳を寄せる。 「むし」 「……」 「むしだよ」 「…………」 「むーしー」 「聞こえてっから!」 柄にもなく固まってしまった俺の気持ちをちょっとは汲めよ。 むしって、むしって、まさか。 「だって、だって普通にあっちからいい匂い」 「僕が前に実験で焼いた時と同じ匂いだよ。あの時は食べなかったけど、どんな味なのかな~」 まじかよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.07.29 16:32:47
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