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たくさんの死体を目の前に据え、『彼女たち』は微笑んだ。
「さあ「めし「あが「れ」 「「「「……」」」」 一方の『俺たち』は竦み上がった。久しぶりに自分自身との連帯感を感じる。 その横では、 「意外といけるー」 「ウマ、ウマ」 「あ、こっちのミソとそっちの骨髄って混ぜ合わせてこの翅に塗りつけるとうま」 「」 3人が盛り上がり、1人が魂抜けていた。 「お、おい、大丈夫かですか高橋先生」 真っ先にリーダーの田中が隣の高橋先生をフォローし始める。もっと早くに止めておければよかったですねと言っているが無理もない、食卓に着くまで覆いがかけられていたのだから。 「……」 もはや返事をすることもできない高橋先生の目を取り敢えず守るべく、リーダーが高橋先生の膝に登りその物理的に大分大きな目を食卓のタオルを借りて覆っていた。普通目隠しと言ったらもう少し色気のあるものを想像するものだが、その行為は全くそういうようには見えなかった。むしろあれだ、野生動物保護。 しゃくさくぐちゃぶちゃと音を立て食べ分解してはまた食べその感想を人に(主に突っ込みに)話しては面倒な顔をされている佐藤から逃すべく、よたよたと先生をおぶい連れて行くさまはまさに保護司。 「……うまいか、木鈴」 「うん」 無心にリスのように食べ続ける木鈴を見る。 木鈴がこんなに度胸のある子だったとは。カニの脚をもぐように、普通に大きな虫の脚を解体する木鈴に、扇風機強に吹き飛ばされそうな笑顔しか浮かべられない俺。駄目だな俺。 人の姿でありながら魑魅魍魎と似た食事をする木鈴の隣で、魑魅魍魎に近いワタは、逆に清々しい位の食べ方をしていた。丸のみだ。 まさに蛇というべきか、その食べ方はむしろストイックにさえ見えてくる。 その隣で黙々と食べる観察。 全く会話らしい会話、接触らしい接触がないというのに二人はまるで共同体のようだった。 「……俺も、食べるか」 「この青いやつお勧めだよ!」 汚れた口の周りを隠さず言う木鈴に、つい普通に笑みを漏らす。 「そうだな、ありがとう」 どんなに醜いものも、哀しいことも、食を通せばすべてが材料になるのだな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.07.31 02:01:11
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