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長押 綴

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2013.05.25
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カテゴリ:.1次メモ
 なんだここは。

 神様と名乗る女に連れて来られた部屋で呆然としていると、不意に明るい破裂音が扉の方から聞こえた。

「あ、あの、たなか?さん、お世話頼まれたんです、が」
「……」

 誰だ。少女の声だが、自称神様のそれじゃない。もっと子供っぽい、そして作り物のような声。

「……入ります、よ」

 入りますもなにも、新しい仲間なんだか捕虜なんだかも分からないような俺に気を使わなくてもいいだろうに。
未だにどう反応するか決めかね、結果無言を返しているとそれを諾と受けとったらしく、そいつはびびったような第一声とは打って変わって、勢いよく扉を開け放した。

「人の、声に返事位しろや!それでも男か、てめぇ!!」

 誰だよ。

 態度変わり過ぎだろ、っつーか声質全然違うだろ。

 襲撃された時の癖でつい立ち上がるが、逃げる間もなく、勝手を知らない暗闇でうまく逃げられるはずもないのだが、そいつは一気に距離を詰めて、また「おい無視か」などと怒鳴ってくる。
 ……しかも、なんかヤンキーみたいな声をかけてくる割には、その声は随分と下の方から聞こえてそのギャップに戸惑う。木鈴の姿がふっと過る。目の前には相変わらず闇ばかり、照明がついているのかすらも分からない。
 だから、不安で。

「……こんな所に突然連れて来られて、まともな反応返す程俺は出来た人間じゃねーんだよ!!!」

 つい対抗して、声を荒げてしまう。……刃には刃で返すしかできないのか、俺は。つくづく自分の衝動的な所に溜息をつきたくなってくる。

「は!?これから面倒見られようってのにそんなふざけた態度っ……」
「うっせーよ、そんなん頼んだ覚えはねえって」
「お前ら二人ともうっせえ」

 突然、部屋に第三者の気配。

「な、だ「あー!デイゴさん!!!」

 突然目の前の奴の声質がまた変わる。いや、声質は同じ、おっさんのようなヤンキーのような声のままだ。明るさと言うか、好意が付加されただけでこんなに変わるものなのか。

「さっきからうっせーんだよ黙れウツギ、『俺』はそんなことしねーぞ」
「っ、わかった、デイゴさん!!!」

 舎弟か。
 なんだ俺は、やくざ事務所にでも連れて来られたのか。

「わるいな、いきなり。こいつ結構アホだから。……で、お前、なんて言うんだ名前」
「あ、た、田中です」

 妙な威圧感に、つい敬語が出る。

「は、別に敬語なんていいよ。俺なんてチンピラにもならない、ただの柄悪そうに見えるけど実はそんなに強くない噛ませ犬みたいな奴なんだから」
「ぐはぁっ」
「?」

 柄悪そうだけど別に喧嘩強くない。それは学生時代というか改造される前の俺を彷彿とさせるもので。

「い、いえ、あ、いや、何でもない。……本当に失礼じゃないのか」
「おーよ。フランクに行こうぜ。あ、っつーことで飯食いにいくか?食いながらここのことの説明とかするから」
「あ、デイゴさんそれ俺の役目!」
「お前だけに任せたら不安なんだよ」


……早くも、人情派の匂いがしてきたんだが。本当にここは悪の組織、いや似非宗教組織なのか?

 混乱しながらも、俺は、温かい声と暑苦しい声の方に一歩、踏み出していた。





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最終更新日  2015.07.31 13:49:13
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