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長押 綴

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2013.06.12
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カテゴリ:.1次メモ
「……」
「………」
「…………」
「テガカリ、ナイノ?」
「…ああ……」

 クールの消えた浜辺。そこはもうすっかり元の海に戻っている。
 俺が投げた毒が、あの肉塊を水に変えた結果がこれだ。


脳の断面


「…ああ、だから僕は使わなかったんだよ、あの毒を使うと手がかりが全て失われてしまうのだから。ふぅ、観察君もまだまだだねぇ」
「お前はすっかり毒の存在を忘れてただけだろうが!」
「そんなことないもーん」
「ある」
「ないもん」

 正直、佐藤の言う通りではある。

「あーるー」

 ツッコミの言う通り佐藤自身はすっかり毒を忘れていたのだろうが、俺も正直忘れていたかった。使いたくはなかった。

「ないっつーの!」

 あの毒は、触れたもの全てを水と汚泥に変えてしまう。

「あーりーまーすぅーツッコミくんムキになっちゃって大人げなぁ~い」

 その真下に居るのが怪物であろうとも、人であろうとも。

「おっ、大人げねぇのはお前だろーが!!」

 もしかしたら、クールがもし生き延びていたとしてもあの毒が体内に取り込まれてしまっていれば、再生するそばから喰らいつくされ、その部分は機能不全に陥るだろう。そうなったら俺は……

「僕は大人ですぅーツッコミ君より6歳も「二人とも、静かにしてくれないか」

「「……はい」」

 いけない。つい、大声を出してしまった。しゅんとした二人を意識から放り、クールへの手がかりを探す方法を模索する。模索する。模索……何故俺はここまで必死になっているのだろう。ワタ、木鈴、一応佐藤、彼女達、代わりのきかない者達とは違って田中なら沢山居るじゃないか。脳が告げる。3度分裂した俺の脳。3度目の分身は生まれてすぐに死んだ。あいつにとっては俺こそが分身だったのだろうが。けれどあいつは俺とさほど変わりなかった。そう、それだ。それこそが、クールとあいつの違いだ。
 ・
 俺が死ぬのはいい。それでも俺はまだここに生きているから。けれどあいつは、いや、今後ろに横に立っている3人も、もう既に俺とは違うのだ。ということは、もし生きているなら、離れて暮らした方がお互いの為かも知れな―――

「カン、ダイジョブ?」
「……ああ、大丈夫だ」

 大丈夫。汎用性の高い言葉だ。心配にも、状態表現にも、強がりにも使える。そうして、怪我の痛みもそれに対する想いも小さな悩みも……小さなことでも悩んでいたいという気持ちさえ、その言葉が葬る。
 ワタのその言葉で、俺は直前まで考えていたことを忘れた。いや、忘れたふりを。頭を振り、周囲の会話に耳を傾ける。駄目だ。こういうことを考えるのは後だ、後。

「……水の中へ、入って探すことはできないのか?」
「そうねぇ…「海の近くなら水の研究所あるかも「でもどうせ壊されちゃってるわ「地下はないのかしら?」

 彼女たちがそれぞれ頬に唇に頭に顎に手をやって話す。ふと、彼女たちは俺達と逆なのかもしれないと思う。姿は違えど近しいことを思い協力する彼女達と、姿は同じながら相手の行動も気持ちも読み切れない俺達。
 どちらがより好ましいのか。

「土、掘り返しますか?」

 ぼうっと彼女たちの遣り取りを眺めていると、木鈴の高い声が耳に刺さる。けれどそれも今は水中に居る時に聞こえた声のようで。

「ううん、それもいいけど「一ついい案があるわ「私達は嫌だけれど仕方ないものね「人探しと言えばあの人たちよ」

 そうして彼女達は揃って悪戯な笑みを浮かべた。

「最近めっきり活躍の減った「手が回り切っていないと言うべきかしら「そう言ってあげましょう、そうけいさ「探偵さんよ」



 ……完全な一致、というわけではないようだ。





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最終更新日  2015.08.15 23:32:36
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