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観察せよ。監視せよ。我等にはそれが許されている。
……これが、”彼ら”の掲げる大義だ。 見なければ守れない。守るべきか否かも”見る”ことで”見”定める。 『彼ら』を、仮に、組織『K』とする。 『K』のルールは、『K』によって作られる。 彼らは軍人と同じく、強大な力を持つだけに、その行使は彼らの”正義”に依らねばならない。 ゆえに、彼らは強く、そしてまた彼らに守られる者も、”正当”足りえる。 以前と比べ、油断すれば、ルールに従う人々が脅かされかねない今、彼らはそうでない人々に対し非常に風当たりを強めている。 いわば彼らは、門番。 『怪物』でなく、かつその門の中の自治に貢献する人々を、また門の外の貢献してくれそうな人々を救うことで手一杯なのだ。彼らの数は限られている。 その、弾かれた人々に優しい――と言っては語弊があるか、少なくとも冷たくはない――人々が、これから俺達の片割れが向かう相手だ。 『K』これに対してどうしても嫌悪感を抱く者。 あるいは、どこか”後ろめたい”ことのある者。 また、彼らのやり方に不信感を抱く者。 みな、リスクが高いことを承知で頼む。 ある者は捜索を、ある者はライバルラボへの密偵役を、ある者は自分を匿うことを。 彼らもまた、観察し監視する。縛られていないだけ自由に、しかし正義に突き動かされていないだけ冷静に。 「……下手をすると、二手に分かれたってことでお互い敵対する……んじゃないか…」 不安になって問うが、 「大丈夫大丈夫、余程のことをしない限りどっちも主体的には動かないから」 「探し人くらいなら日常茶飯事、他のごたごたに巻き込まれてたら余程のことになるかもしれないけれど」 俺たちと同行することになった二人が言う。 ちなみに彼女たちは、「前」「右」と名乗った。ちなみに後の二人は「左」「後」。 どこかの少年漫画の適当なまとめ名付けのようだと思ったが、恐らくそれを突っ込めば彼女たちの昔話が始まりそうで、また長くなるのではと思い、突っ込まなかった。佐藤は突っ込みが黙らせた。 「前さん右さん、その余程のこととかごたごたとやらが心配なんですけど」 突っ込みがまた言ってくれた。言いづらいことをずばずばと言ってくれるので正直助かる。時々ひやひやもするけれど。 「長く生きていればそういうことに巻き込まれることもあるわ」 「それも含めて人生よ、人生一生修行なのよ」 「…………は、はあ」 「そういうことを聞きたいんじゃないんです~って顔してるねぇ突っ込みくん」 「しっ」 慰められても。諭されても。恐らく突っ込みはそう思ったのだろうなと思う。表情に出るから。 あまりに押しが強いと、逆に引けてしまう奴を、佐藤がサポートしているのではないか。 そんな身内への分析を一瞬だけしてから、ここは俺が何か言わねばなるまいと、俺なら余計なことを言ってもまだ寡黙な分許されるかもしれないと、彼女たちに向き直る。 「……あ、あの、すみません。一応、そのごたごた、というのはどういった可能性があるかということだけお聞きしても…」 「…これからあっちの組織に行ったら、多分…」 「嫌ってほど、聞くことになるわよ」 ……とてつもなく余計なことを言ってしまった、気がする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.10.27 19:38:47
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