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カテゴリ:🔗少プリ
------------------- 「貢君、これ調理実習で作ったんだ。食べてくれる?」 「・・・・・・かたじけない」 サムライと静流はそう言って、幼馴染特有の雰囲気をまとわせて、楽しげに会話していた。 排他的で身内特有の以心伝心な会話。 ・・・入れない。 後になってから。 その時声を掛けられず、後になってから悶々と悩み続けても、 自問自答しても実際的な行動には繋がりえないと分かってはいてもどうしても考えてしまう。 胸がむかむかする。別に僕にサムライの行動を制限する権限はない、従ってサムライが何をしていようと感情を乱される理由も必要もない。 先日静流が転校して、サムライと会話しはじめた頃からこんな感覚をよく体験したが、その感情の理由も、それを制御できない原因も曖昧で理解しがたい。意味の分からない把握できない感情は胸を頭を少しずつ蝕んでいく。 震える手。それが持っているものは、静流と似た大きさの、けれど随分と印象の違うカップケーキ。 数十分前僕が生まれて初めて作ったそれは、軽量に時間をかけすぎたせいでトッピングは何も無く、砂漠のようだ。 静流の庇護欲をくすぐるような作品とは大違いなそれは、無機質で人工的な僕の個性とも呼びがたい個性を現していて、余計に気持ち悪くなる。 「……」 サムライにあげるなどということは、別に僕にとっては必要条件ではない。単なる十分条件だ。 調理中に何度かサムライの顔が浮かんだということは関係無い、そう、普段彼と一番長く接してきたからに過ぎないただの刷り込みだ。 たかが調理実習で作ったカップケーキに何を思い悩んでいるのだろう。 馬鹿馬鹿しくて笑ってしまう。 そういえばヨンイルが無理に貸してきた少女漫画に、こんなシーンがあった気がする。 同じ様に調理実習で作ったクッキーを好きな男に渡そうとするヒロインが、 他の女性にクッキーを受け取る男を見て立ち去るのだ。 だが僕は違う、ヒロインなんかじゃない。 サムライ、いや貢の世界に居るヒロインは苗だ。 あの少女漫画の中ではヒロインは結局報われていた。 気付いた男が彼女を追いかけ、その不器用なクッキーは好意の対象の胃袋に納まった。 だが鈍感なサムライは僕が見たことに気付いていないだろう。 それ以前に僕が気付かれないように静かに立ち去ったのだから気付けないのは当然だ。 なのに。気付かせないように気付かれないようにと願っている一方、気付いてくれわかってくれと願っている自分も居る。 いつから僕はこんなに弱くなってしまったのだろう。 ------------------- 次回(嘘)副題「カップケーキは俺のもんや!」 ー次回あらすじー ・ヨンヨンが実は見てる ・追いかけてきたヨンに、意地を張ってしまう直 ・そこに何故か現れるレイジ レイ「もーらいっ」 ヨン「!」 直「!!」 レイ「あ、いけるわコレ。店のやつみてぇ」 ・一瞬呆ける直 直「だ・・・だろう!分量も焼き時間も完璧だからな」 ・ドヤ顔をする直ちゃん ・しかし少し無理に作っているドヤ顔 ・2個目を食べようとするレイジを止めるヨン ヨン「こんなの胸焼けしてまうわ。…色々、誰かへの気持ちがこもっとるんやから」 ・それとなくサムライの所に行くことを提案する道化 「渡してきい。不安なら俺がついてったる」 「・・・・・・・・」 ・8章末の空気 ・withまだもぐもぐしているレイジ(ロンがカップケーキくれないので拗ねている(ロンは失敗したので恥ずかしい/この後投げつけるように渡す)) ・ここまで考えたけどこの後のみっちゃん側がアレなのもあって形にできない お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.08.06 23:04:00
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