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カテゴリ:🔗少プリ
今日も今日とて一人帰り道を急ぐ。 先月まではここまで早足で歩く理由もなかったが、 今のサムライには直ぐに帰らねばならない理由がある。 「直。…直?」 家に直が居ない。 遅かったか。 サムライは苦い顔をして風呂を覗く。 「矢張り…」 湯。 直が来てから出し放しにせぬようにと気をつけていた筈が、朝ごたごたしていたせいですっかり失念していたことを思い出す。 自分の失態だ。眉間に皺が寄る。 「勝手に出歩くなどけしからん」 窓の鍵が開いている。恐らくそこから出たのだろう。 しかしここは2階、しかも直にぴったり来る服はまだ買っていない。色々な意味で安否が心配だ。 いやあのような格好で…… 「今帰ったぞ」 「!」 振り返ると、そこにはサムライの服を着た直が居た。明らかに大きいTシャツを着た直。そして下は…… 「けしからん!」 「!」 直がびくりとする。つい大声を出してしまったことに自分でも戸惑うが、いやそんな場合ではないと思い直す。 「いきなり大きな声を出すんじゃない、聴力がいい猫にやってはいけないことの一つだぞそれは」 「直、何故下を履いていない!」 「は?そんなこと決まっているじゃないか、僕に合う下穿きが無かったからだ」 ベルトを締めても落ちてくるし、裾は捲り上げても落ちそうだし不自然だから外したと堂々と言う直を見ると何も言えなくなる。 「……勝手に居なくなるな」 「僕が出ていいかと言っても却下するじゃないか」 「それは…」 連れて行くにしても直がやってきた一晩目のことを考えると非常識なことをするのではないかと不安だし、あの夜のようなことを直が他の所でもするかと思えば、いつ帰ってくるのか解らないと思えば出せない。 …だが、そんなことは言えない。 「まあいい。僕が今回外に出た目的は「君にどうやったら恩返しを出来るか」をリサーチする為だ」 「は」 「君に雨の日拾われ一飯の恩まで受けては返さねば天才のプライドが廃るから色々試行錯誤しているというのに、以前まで通用していた恩返しの手法が恩返しになっていないどころか逆効果になっている。僕の矜持が許さない。なんとしてでも君に「恩を受けた」と認識してもらいたい」 何か、妙な予感がする。 まさか。 「まさか直、俺の知り合いに…」 「?君の知り合いなど僕が知るわけないだろう。アルバムも手帳もないのに」 会ったのか。と言おうとすると遮られる。確かに最もだ。だが、それでは 「…では、何をしたんだ」 「凡人には予想をしづらいのも仕方がないな。……これだ」 「…!」 直の手に下がっていたもの。先程まで直の格好にばかり目が行っていた為気付かなかったが、それは結構な大荷物のようで今更ながら気になってくる。 「…食材か」 「そうだ。君は「苗」とやらの食事、そして今日に至るまで食べ物で僕に恩を売ってきた。ならば同じ「食べ物」で返すべきだろうという結論に至ったまでだ」 胸に何か湧き上がってくるこの感情は嫌な予感か、それとも嬉しさか。 ---------------------------- ・この後 「な、直…」 「君は黙っていろ」 ・なんとか出来る(真夜中) ・作ったのは肉じゃがとか和風のもの(お袋の味でも懐石料理でも) ・ほぼ無言のサムライに (もしかして口に合わなかったのか) と悶々するにゃおちゃん ・うまいと思っているがやっぱりムッツリのサムライ ・食材は家具の隙間に落ちていた小銭で調達 ---------------------------- 根負けしたサムライが直用に何着か服を用意するのはまた別の話。 そしてサムライがつい「うまい」と言ってしまうような物を作ってやるとリベンジを決め、 それから度々勝手に出掛ける直にサムライがおろおろするのもまた別の話。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.08.14 01:05:13
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