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カテゴリ:🔗少プリ
「そや、カラオケ大会しようや」
車の中で突然ヨンイルが言い出す。 「…却下。運転に集中できなくなる」 「ええー」 苛々声で返す鍵屋崎。 しぶしぶと引き下がるヨンイルだったが、暫くしてまた言い出す。 「渋滞中くらいええやろ?」 「……仕方がないな。勝手に歌えばいいだろう」 「やったー!」 手に拳を握って「ふーん♪」と鼻歌を歌いだす。イントロからか。しかもやたら凝っている。アカペラか。 「朝もやの中 続く白い道 鳥のさえずり 挨拶かわしながら 時に雲が 垂れ込めて」 握った拳で器用にフリまでつけて、何かのアニメの歌を歌い切ったヨンイル。因みに裏声だ。誰だお前。 「よく覚えてんな」と言うと「俺の歌唱力は52万やで」と言われた。知るか。 「よっし、次は直ちゃんの番やでー」 「は!?」 次は鍵屋崎が驚く番だった。そりゃそうだ、さっきの言い方で誰が自分を含めて言ってると思うだろう。ヨンイル以外に。 「僕は辞退する」 「えーそりゃないで直ちゃん、ここはノリで歌おうや」 「キーストア喉に自信ねーのー?」 「……何だと」 ムキになった鍵屋崎が、やっと歌いはじめた。 息を吸い込む音に我知らず乗り出していることに気付く――…… 「・・・such a lovely place,such a lovely face...」 ……だめだ、何歌ってんだか全然分かんねえ。 でも、これはどっかで聞いたことがある気がする。 音に包まれてもやもやとした記憶を追ってはみるものの、はっきりとは思い出せない。 でも、不快じゃない。少しぼんやりしているうちに鍵屋崎が歌い終わる。 「…これで満足か」 「ヒューヒュー」 「直ちゃんええ声やん、今度Komm,susser TodとかFaithとかlithium flower scottとか歌ってや!」 「歌詞の内容による」 一瞬で独特の空気が霧散したが、斜め前のサムライはまだそこから抜け切れていないようで一人口を押えている。 「サムライどうしたよ」 「…いや、直の歌を聴くのが久しぶりでな」 「そうか?」 「ああ。……良かった」 サムライが顔を赤くして言うと、鍵屋崎が黙り込む。 多分サムライに負けず劣らず照れているであろう鍵屋崎がそれを隠すように口を開く。 「そういえば君の歌も随分聴いていないな。ちょうどいい、逆時計まわりならば君の歌う番だろう。ほら歌え、さあ歌え、可及的速やかに歌え」 「いや、結構だ」 「サムライ音痴なら無理しなくていいぜ」 「何とでも言え。俺は歌わん」 そんな押し問答の末、トイレ休憩になって結局うやむやになった。 安堵した様子のサムライだったが、多分というか確実にこの後鍵屋崎に色々言われそうな予感がする。 俺はといえば、レイジの歌を聴いたり俺自身が歌うことがなくてほっとした。 ちょっと残念な気がするのは横で騒いでいるヨンイルの影響に違いねえ。 【続く】 ------- サムライ→演歌 レイジ→洋楽 ロン→学校で習った曲+他の誰かが歌っていた歌(うろ覚え) レイジはパンク/ラップのリズム重視ならどうにか… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.04.28 21:52:45
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