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カテゴリ:🔗少プリ
「うわあああああ!!」
「!?」 突如ロンの叫び声が響く。 追って数秒後現れるロン。その顔はまさに必死と言うほかなく、 昼食の後片付けをしていた僕は非常事態に困惑する。 「鍵屋崎逃げろっ、奴が来る!!」 「……は?」 訳が分からないまま走り出す、そしてその直後追っ手の正体を知る。 わーん……わーん…………わーんわーんわーん……… 「蜂か!」 「蜂だよ!!」 背後には蜂。振り返る余裕もないが、この羽音の質量感からしてスズメバチ、おそらく数十匹ほど。 足の短距離向きの筋肉は早くも限界を迎える。心を落ち着けるため、そして状況を把握するため隣で青ざめながら走るロンに話しかける。 「訳が分からない、全く厄介極まりない、巻き込まれていい迷惑だ。百歩譲って逃走経路に僕が居ることを認識していなかったことは免じてやろう、だがそもそも何故あんなものに追われている。まさか君が奴らを」 「違うっつーの!流石に俺はあんなのに手ェ出さねーよ、飛んでったボール追いかけたら当たってたんだよ!」 走る、走る、ただひたすら足を交互に繰り出す。もう限界だ、日がな一日勉強もせずあちこち走り回っているロンに比べて僕の両足はあまりにも貧弱。 息が切れ、頭の中がぼうっとするが、ロンの声で目が覚める。 「鍵屋崎っ、こういうのって池の中に飛び込めばいいのか!?」 「…映画漫画ではありがちだが、それははっきり言っておくと無謀だ。蜂は待機が出来る、特にスズメバチは執念深い上蜜蜂と違い何度も刺すことができる。対処方法はただ一つ、逃げることだけだ。400mほど巣から離れれば危機は去った、巣を守ろうと帰っていくらしい」 「……ここで、400m?」 「ああ。下りの坂道で良かったな」 「山奥で?」 「そうだな、空を飛べる蜂と違い僕たちは地上の凹凸にも注意をしなければならない。全く君は危機意識が足りない、僕が散々車の中で言ったことを聞いていなかったのか、忘れたのか?」 「忘れてなかったけど…ちょっと奥に踏み込むぐらいなら大丈夫だと思ったんだよっ!!それより説教こんな時にすんなよ、舌噛むぞ!」 やっと開けた場所、山の本道に出た僕たちは、更に数百メートルほど進んだ。 走って、撒いたかと思ってはすぐさまブーンという音が聞こえて小休止を取っては走り出すの繰り返し。まるで折り返しの無いシャトルランだ。 やっと撒いたかと思った時にはもう日はすっかり暮れていた。 「……」 「………」 最後の方は殆どロンに引っ張られていた。全く情けない、今度から少しは運動をしなければ。 見上げれば目の前には辿ってきた道が夕暮れの中より一層重量感を伴って存在する。 坂道を上る、目算20度くらいの道。 舗装されているため道に迷うことはない。ないが、 「…今からこれ、登んのかよ…」 「……それしかないだろう」 連絡手段はなく、なんとか二人で支えあって上る羽目になった。 上に残っていた三人には、勝手に居なくなるなと言われた。 心配しているというのは分かったがその心配すら僕の癇に障る。 ◆ 取り敢えずロンには仕事をさせ本を読ませ球遊びなどしている余裕を奪った。 ついでにカブトムシをやたら集めていたレイジや漫画を読み耽るヨンイルも強制的に従事させたが、 最終的に狩り、料理、そしてそれら業務をしながら雑談をしている内にテンションが上がってきたようだ。 ヨンイルが松かさや油成分の多い木を入れ過ぎて炎が大きくなり過ぎたりレイジが投げたゴキブリが僕に当たったり説教したり別件で来ていた凱とロンが大喧嘩になったりしたがキャンプとしては概ね成功と言えるだろう。 【続く】 ----------------- サムライの影が薄い ----------------- 蜂: ・直ちゃんとサムライ:そもそも近付かない ・レイジ:ひょいひょい避ける、気配を消して隠れられる ・ヨンイル:煙幕で文字通り煙に巻いてダッシュ ・ロン:逃げる時にわめいてしまうので余計に追ってくる(それでも足は速い) ・サーシャ:調子に乗って近づくが白いので刺されない。調子に乗って夜肝試し感覚で行ったら襲われる ・リョウ:誰かが襲われている隙に蜂蜜を取る ・ビバリー:叫びそうになるのを必死に抑えて逃げる ・ホセ:襲われるが全て拳で叩き落とす 「心配無用です、一撃で殺して差し上げますから」 ・静流:殺虫剤噴霧(ガスマスク着用) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.08.27 12:05:44
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