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カテゴリ:🔗少プリ
サムライは一人運転する。 「うう…」 「…すー……」 その隣からも後ろからも、静かな寝息が聞こえてくる。 「むにゃむにゃ…メイド服……」 時折呻き声に妙な寝言も聞こえてくるが聞こえない振りをする。 車の中はサムライを残して全員が夢の中だ。 朝、既に起きていた直、ヨンイル、レイジ。 何を話していたのか。 気になってはいるが、なかなか訊けないまま今の状況に至る。 仕度で力を使い果たしたのか、単調な振動の中ロンを含めた全員が寝入ってしまっている。 隣に居るのに、世界に自分一人で居るような感覚に包まれる。 「……」 轟々という音だけが聞こえる。 静かに口を開く。 「……咲き行くすべを求む…」 呟くように囁くように紡がれる音は、昇り始めた日の光に溶け込んでいった。 --------- 「……重い」 ずっしりと感じる重みはロン。 家に着くまで結局寝入ってしまった、夜更かしをして寝過ごした挙句人に起こされるなど天才にあるまじき失態だ。 サムライの「着いた」と言う声で目を覚ましたはいいものの、その後が苦行のようだった。 全員夢うつつ。揺すっても呼びかけても軽く叩いても起きるどころか気持ちの悪い動きをされ、こちらまで起こす気が失せる。 流石にこの格好のままでは寝違えてしまう為、端から順にヨンイルをサムライが、ロンを僕が連れ出す。 「直、手を貸す」 「侮らないでもらおうか、ロン程度なら運ぶことに何の支障もない」 「……」 「運ばねばならない荷物は数多くある。僕の試算によれば、君がそちらに取り掛かったほうが能率は上がる」 「……承知した。…無理はするな」 「君もな」 ふと、サムライと出会って間もない頃もこんな会話をしていたことを思い出す。 だがその頃にはこんな重みは無かった。 いつの間にかここまで来ていたということに、何故か自然と口角が上がる。 --------- リュウホウをヤブ医者から引き取ってきた、その後のこと。 「……」 「……」 目の前にあるのは宿題。そうだ、何日か前に強制的にやらされた宿題だ。 「君達は確か、キャンプ中に数度尋ねた時には「進めている」と答えたな」 鍵屋崎の感情が窺い知れない目が声が怖い。 「……」 「………」 「…………」 広がる沈黙。サムライはどっちに味方することもできずむっつり黙り込んでいる。 「今日は二十八日。……一日一割ずつ進めれば終わる。始めるぞ」 「…指南はする」 「…まじかよ…」 「なんで9月1日休みやないん…?」 「去年は9月1日が休みだったが、君達は宿題に追われていたな。…しかも、忘却していた宿題が」 「あああああうん、始めるわー宿題頑張るわー」 「今年は忘れてねーよ!…多分」 「……掃除も進めておく」 「…にゃ、にゃあ」 リュウホウが慰めるようになんとも言えない声で鳴いた。 ◆ 「……あった」 「やはりな」 結局忘れていた宿題が見付かった。出来れば一生見付からないで欲しかった。しかも絵を描くやつだ畜生終わんねえ。ヨンイルが「手伝うか」と名乗り出てくれたのはいいがそういえばこいつに任せて全部美少女ゲーム風に描かれたことがあったのを思い出して全力で拒否した。「そうだな、自力で始末をつけるのが一番だ」と鍵屋崎に何故か納得げにうんうん頷かれたが喜べばいいのか分からず微妙な反応しか返せなかった。七夕で夏休みの宿題について頼んでおけばよかったかとか半ば妄想に逃げる。一旦これ描いて乾くの待ってる間に算数のドリルやって国語の感想文書いてまた描いて絵日記進めて…… 「……逃げてえ」 「俺も」 「やわらか戦車…ええなあ……」 【終】 ------------ サムライに車のCМ出てほしいです 【蛇足】 七月中に宿題を終わらせられる人は色々すごいと思います。 長引きましたが終わりです。 ありがとうございました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.08.28 01:14:41
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