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カテゴリ:🔗少プリ
※直ちゃんとロンが先生です ※ロンが若干おっさんくさいです 設定未満→◆ ------- 「う゛っ……まだあんのかよ…」 「仕方がないだろう、集中していればすぐ終わる」 「お前のすぐは他のやつにとってのすぐじゃねえんだよ」 子供の頃は教師なんて夏休み中見回りぐらいしかすることねえと思っていたがそんなことはなかった。 実際の所、見回りに駆り出されたり生徒、特にレイジの指導をしたり研修会行ったり一学期は忙しくて先延ばしになっていた会議をやったり2学期の行事の打ち合わせをしたりだの頭がパンクしそうだ。 「見た所、君のやり方は少し効率が悪い。衝動に任せてやっているためだろう、 手順を少し考えてやったほうがいいのではないか」 そう言う鍵屋崎の手元はカタカタカタカタ音を立てている。 ビバリーほどではないが相当手馴れている仕草、コンピューターのような正確さはその無表情と相まってキーボードと一体化しているかのように見える。 最近やっと一本打法から抜けてきた俺からすればかなり遠い世界だ。 「どっから手付けていいのか分かんねえんだよ。それに目の前のやつ片付けていけばその内終わるだろ、手順だの何だの考えるのに頭使ってるよりはそっちのほうが俺に向いてる」 「だがそのやり方で気力をすり減らし結果終わらなければ元も子もないだろう」 実際そうなりそうな気もしていたが見て見ぬふりをしていたそれは、自分以外に突きつけられると余計に現実味を増してしまう。だが気力と体力頼みで学生時代も宿題を終わらせてきた俺にはこの方法以外は難しいというか恐らく無理、七月中に宿題を終わらせていたであろう学級委員長タイプの鍵屋崎とは真逆な俺は他の方向で頑張るしかねえ。 「大丈夫だっつの」 強がりだと自覚しつつも言う、案の定鍵屋崎が苦い顔をする、処置なしとかぶりを振り自分の仕事に戻る。 鍵屋崎のアドバイスなんだか説教なんだか分からない助言の後は、たまに気分転換に俺が投げかけて会話とも言えないような掛け合いが二言三言続くほかは、カタカタカタカタ、ガサガサガサガサ、カリカリカリカリひたすら無機質な音が職員室を埋め尽くす。因みに俺と鍵屋崎以外に職員室には誰も居ない。皆部活の顧問だの出張だの有給だので出掛けているためだ。職員室のクーラーはありがたいが、朝からずっとこの中に居るとじりじり暑いと分かっていても外出したい気持ちが募る。窓の外から飛んでくる遊ぶガキ共の楽しそうな声が白黒写真の中に飛び込んだ色みたく気になる。駄目だ、集中しろ俺。自分を叱咤激励しているとやっと書類がひと段落着く、だがこれで終わりじゃない、出来上がった文章の推敲に入る。まったく、他人のならともかく自分の文章だと退屈さ面倒さが数割増しになる作業だ。 「あ、あの……」 だからその声につい気持ちが行ってしまうのは仕方ねえ、その筈だ。 「何だ?」 がたりと音を立てて立ち上がるとそいつがびくりとする。 見掛けねえ顔だが、学生服を着てるからうちの生徒ってことは間違いないようだ。 ドアの前で意を決し、更にカラカラカラという音の後更に意を決して声を出したらしいそいつは人見知りなのか縮こまってうまく喋れない様子。 「あ、悪い、びっくりさせちまったな。何か職員室に用なのか?」 「は……はい」 未だにおどおどしている様子にあんまり見詰めるのもよくないかと思ったが、 この弱肉強食な学校では淘汰されてしまいそうな、ある意味新鮮な様子が気にかかる。 「…えっと、それで何の用なんだ?」 待ってたら何か言うかと思ったがそんなことはなかったので、言い方が柔らかくなるように気を付けて喋る。自分でも何かむずむずするが、そいつはそんな俺に構わず俯き気味で意を決したように話し始める。 「……か、鍵屋崎先生……に、ちょっと……提出物が。あ、あの、名前はリュウホウ、です」 「…あ、ああ。リュウホウか」 どうも調子狂うと思いつつ鍵屋崎の席を見ると居ない。トイレだか何だか分からないが全くタイミングが悪い、苦い顔になってしまう。どことなく気まずい思いで後ろでおろおろしているリュウホウに向き直る。 「あー、ちょっと水でも汲みに行ったか資料取りに行ってるみたいだ。呼んで来るか?」 「い、いえとんでもない…ここで待ってます」 「そ、そうか」 所在無げにしている様子につい椅子をすすめたくなるが、立っているだけで蒸発しそうな様子を見ているとそれも出来なくて後ろ髪引かれつつも席に戻る。他の生徒、特にレイジやヨンイルならここで馬鹿みたいな会話がぽんぽん出てくる所だが、全く面識のない生徒だとそうはいかない。 ……ぎこちない様子、それでも微妙に学校馴染んでる様子。 よく見る生徒達、転校生、どちらとも違う存在感をそいつは持っていた。 --------- ------------------ 若いなー と おっさんくさいなー を絶妙なバランスで混ぜたのがロンじゃないかなと思います サムライのじじむささとも直ちゃんの大人っぽさともレイジのアダルトさとも違う おっさんくささがロンの魅力の一つなんじゃないかなと思います お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.08.31 01:00:41
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