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カテゴリ:🔗少プリ
「重い……」 「寝るな、寝たら死ぬでロンロン!」 「寝ねえよ!」 ここは雪山でもなんでもない。 俺は小学校、ヨンイルは中学校、レイジは高校に行く途中の通学路。今日は始業式だ。 西区の中学に行くヨンイルと途中で分かれる、手を振り返す気力もない。 背中が手が重い。 「ロンそれ半分持ってやろうか?」 「いらねーよ、ちゃんと持てる」 正直両手ともぶるぶる震えてる、オツムに反比例して体が貧弱な鍵屋崎ならどすんと落としちまうところだがここは男の根性を発揮、えいやっと持ち直す。 「ったく、去年はちょっとずつでよかったのに……」 何が哀しくて始業式とちょっとしたお達ししかないはずの今日、こんな大きな荷物を持っていかなければいけないのか。 担任の鈴木は悪趣味なのか慎重なのかと言ったら間違いなく慎重なほうで、締切はやめにしといて後後本当の締切で遅れる奴を減らす算段なのだろう。確かにそれは道理だが、いくらなんでも多過ぎる。 右手に自由研究の紙、左に道具箱、背中にはランドセルとそれにぶら下がった上履きと体育館履き、更に午後雨が降りそうだからってことで持たされた傘。 よろよろと歩いていくヨンイルも似たようなもんだった。あっちの場合夏休みに作った物が等身大人形だったから自己責任といえば自己責任だが。 対するレイジは教師の違いのせいか軽装、手に持っているのは少しのプリントノートが入った鞄だけ。正直羨ましいが口には出さない。 「だから学校に着くまでだって、貸してみ」 「いらねえっつーの」 よろよろよたよた、歩くたび振り子のように揺れて体力を奪う上履き袋にイライラが募る。 「もーらい」 「あっ、返せよ!」 「返してほしけりゃ俺に追いついてみろよ」 「…!」 手を伸ばすが、ひょいひょいとかわすレイジ。数分奮闘してみたものの普段の運動能力と体格、加えて今日は荷物がある。 くそ、全然届かねえ。 「おしい、ロンあとちょっとだ」 「ーっ、舐めんな!」 「おっ」 油断した王様の隙を突く、見事に俺の手にもう一度収まった道具箱。 「やー、やるじゃんロン。んじゃまた放課後にな」 「あ゛?」 レイジがたっと駆け出して初めて気付く、この景色は何か見覚えがある― ――小学校の正門。 「このやろ…わざとかよ!?」 手加減して取らせてやったと思われてるのが悔しくて怒鳴るが、「いや今のはマジで油断してたって」と飄々と返す王様。 本当なのか嘘なのかその笑顔からは判別できず、苦い顔で見送るしか出来ねえ。 周りの目線が気になってきてそれを振り払うように歩き出す。 顔が熱いのは動き回ったせいもあるがそれ以上に照れが物凄い。 あとで覚えてろレイジ。 ---------- -------------------- 新任教師はじめちゃん。早くも学級崩壊気味。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.09.01 00:07:54
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