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カテゴリ:🔗少プリ
友人が見た夢を文章化してみたホラーもどき。 パロ元は「トンネル―プ」というゲーム。 全員大学生設定。 --------- 「……旅行のつもりではなかったのか」 そう問うと、旅行の発案者ヨンイルがあっけらかんとした、好奇心と期待に満ちた笑みを浮かべる。 「やから、これもその一部。ちょっとした肝試しや。」 目の前に存在するのは、僕達の身長より数倍高いトンネル。 奥に見える光は小さく、このトンネルがそれだけ長いことを示している。 「昼間下見したし、危ない所なさそうやろ?」 「………僕は下見のつもりは全くなかったがな」 そう、下見などではない。 昼間、僕達7人はただ『見る』為だけに、ここを歩いたのだ。 トンネル。坑道ではなく隧道。 一般人が峠を越えずとも山の向こうへ抜ける為作られたそれは、灰色に塗り固められ無機質ではあるが周りの空気や光や生えた苔のせいか、今まで人を通らせてきた年季によるものか、どこか温かみを持っているようにも見える。何十年も前、当時の最善の方法で作られたトンネルは、規模がさほど大きくないにしても少々興味をそそるものだった。 一体通り抜けるのに歩いて何分がかかるのか、三組に分かれて平均を出そうと提案したのはヨンイル。 測量士でもないのに何故そんなことをする必要があるのか甚だ疑問だが、そのやけに輝いている目、そして会話に退屈しない組分けを見れば何かを言う気も失せる。 「じゃあ、初めは俺らな」 そう言ってトンネル内部へと踏み出したレイジとロンの背中が、段々と奥の光の中へ吸い込まれていく。 開始から10分と5秒後、ちらちらと奥の光が翳ることで、彼らが手を振っていることを認識できた。恐らく向こう側に着いたという合図だろう。 隣でヨンイルが楽しげに手を振り返している。 「直ちゃんも手振ろうや」 「断る」 少し意気消沈したヨンイルを放置して、二番手であるビバリーとリョウを送り出す。 5分後すれ違い、その5分20秒後じゃれながらロンとレイジが戻ってくる。 それを契機に僕達3人も歩き出す。 何の変哲も無い灰色の道と壁と天井だったが、三人で大学の課題について話している内にトンネルの端に辿り着く。 押し込められた空間の途切れた先には青空、そしてそれを縁取る緑。 視線を降ろせば、何の変哲も無いただ植物と石が多いだけの山道。トンネルを抜けると雪国というかの小説と違い、先日から見慣れている山道と日光だというのに、トンネル一つ抜けるだけで随分印象が違って見える。トンネルという閉鎖的な、時の流れを超越したような空間から開放されたような生の実感を得る。 「うーん、あったかいなー」 トンネルの内部は日光を遮られ涼しかった。その対比で快く感じるのだろう。 日光が照りつける中トンネルに入った当初はここにずっと居たいと言い出したヨンイルを思い出す。 「それは分かるが、そろそろ彼らのもとに戻らないといけないだろう」 「うむ。他に、まだ行く所もある」 トンネルの出口は入り口と化し、僕達はまた歩き出した。 平らな地面が靴裏を叩く感触は僕達を弾くような人工らしさ、同時に足が地に根ざしてもいるような重厚さが相俟って現実のような、目覚めたばかりの気分のような、不思議な感覚を与えてきた。 結局トンネルを抜ける為に必要な時間はヨンイルの与太話に付き合っていればすぐに終わるほど、 平均10分。トンネルの作りも、染みはあるが亀裂はなくしっかりしていて脇道のようなものもない。 電波も多少は弱くなるものの、終始アンテナが立ってはいた。 --------- ------------------ 多分不定期で続きます。 タイトルは七影隧道と七人岬から。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.09.24 13:53:24
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