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長押 綴

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2014.09.28
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カテゴリ:🔗少プリ

前回



「……こんなの選ぶんじゃなかった」
「体育祭の競技はすべからく体力を無駄に消耗するものばかりだ。だが今更棄権することなどできない。よって文句を言うことなど時間と労力の無駄だ」
「分かってるけどさあ、ちょっとぐらい愚痴らせてよ」
「愚痴を言う暇があったらどうやったら勝てるかを模索すべきだろう」

「どこに模索する所があんのさ、練習なんてただ走ってるだけじゃん!!!」

体育祭の練習はグラウンドの端で朝や昼休み、放課後や体育の時間などを利用し行われる。
借り物競争を選んだ僕は昼休み、いつもは読書や本について討論している時間にわざわざ着替えて校庭で汗を垂らしている。走っている間も疲労が溜まるが、待っている間というのも周りに観察対象がない状態では精神的に疲れさせる要因となる。先程から周りの体臭が酷くなっているのも耐え難い。それに加えて、思考の海に沈もうとしてもリョウの愚痴が邪魔をする。
骨格標本の頭蓋骨を持って愚痴を言っているさまは非常にシュールだ。

「最初のうちは楽しかったけどさあ、だんだん飽きてきたし元の場所に戻すのもめんどくさいし。
 何が出るかわからないから他の人にも頼りづらいし相手の邪魔しづらいし」
「……今の言葉を聞いて君の担当がこの種目でよかったと思ったが」
「敵の足引っ張るのは立派な作戦でしょ?っていうか、そう言う眼鏡くんこそどうやって勝つつもりさ。いろいろな物の場所暗記してるって言ったって足の遅さと体力の無さで台無しじゃん。そんなんでどうやって勝つつもり?」
「…確かに僕には身体的能力の面においてはほとんどの生徒に劣る。だが、本番になれば練習とは違う状況が作られる。それに賭ければ勝利する確率は上がる」
「は?」
「当初、安田がチェックしたのち配布するという形式にする筈だった題の紙だが、先日それが改変された。
 安田はその日、ハルを見張る役目を任命されたからな、下手に動くわけにはいかなくなった」
「うわー安田ご愁傷様・・・」
「よって、配布するのは別の教師達になる。ここで何が起こっても不思議ではない」
「・・・・・・借り物の札に細工がされるってこと?」
「ああ。何枚かは確実に紛れ込むことになるだろうな。その時にそれぞれの嗜好が現れる可能性が高い。」
「曽根崎サンなら『何歳以下の子供』とか柿沼サンなら女装関係とか?」
「そういうことだ。よって、自分のレーンに誰がばら撒いたかを目視した後、彼らが配りそうなもので、近場にあるものに目星を付けておけば、ある程度の効果は期待できる」






そう言い放ってから、早数日。






あちこちのスピーカーから流れるビバリーを筆頭にした放送委員たちの騒音レベルの声すぐ近くで行われる肩の接触から発展した罵り合いから発展した殴り合い保護者陣への心象を良くする為か制止に入る教師達の声。祭りの初めは高揚した生徒を抑えきれないと判断された為、未だに保護者達は入場していない。

「そういえば眼鏡くんさ、だれか来るの?うちはママが来るけど」
「……低能共の群れの中に大事な母親を連れてくるなど気が知れないな」
「そのために応援席が分かれてるんじゃん。保護者用にわざわざ鉄条網まで作られてるんだから大丈夫でしょ?
 っていうか、その言い振りだと眼鏡君はもしかして」
「誰も来ないが、それがどうした。このように非衛生的で品性下劣で劣悪な環境を恵に見せるわけにはいかない」
実際学校の外では体育祭の存在すら告げていない。
「……いや、まあ、別にいいけど…」
完璧な無表情で言うとリョウが微妙な顔をして黙り込む。
実際の所、ほぼ絶縁状態の両親はともかく、恵に応援してもらうことへの誘惑が無かったわけではないが、それと恵の身と精神の安全を考えれば当然結論は決まっている。


「……」
「眼鏡君良かったじゃん。応援してくれる家族が居て」

最初に僕が参加した種目は全員参加のリレーだった。
レーンに立つ前の微かな緊張、前の走者が必死で走る姿を見て決める覚悟、飲み込んだ唾の音。
それら全てが走り終えた今では夢を見ていたような感覚になっている。

その数秒後僕がロンからバトンを受け取った瞬間声を張り上げたのは、ロン、レイジ、サムライとあと一人。

何かボイスチェンジのような物を利用したのか声質が変わっていた。年甲斐もなく上げられた声は普段の姿からは想像もつかないもので、けれどその張った声は不思議と僕に力を与えてくれた。

「…」
無言のまま安田を見るが、彼は何事もなかったかのように無表情で眼鏡をくいと上げる。

「……そうだな」
「眼鏡君が素直だなんて……」
「…」

リョウの言葉に反応する気持ちは起きない。事実だから仕方がない。

彼が応援してくれたという事実も、それによって安堵と喜悦を感じている自分の存在も。





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・この後恵ちゃんが来ていて本格的に恐慌に陥る直ちゃんの姿が見られたのはまた別の話。





・取り敢えず直ちゃん周辺の勝手なパラレル設定▼


 安田さん=遺伝子上の父 は発覚
 両親=絶縁状態
 恵ちゃん=一旦恵ちゃんがある程度どろどろしたものを吐き出した後の、少しぎこちない状態





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最終更新日  2014.09.28 16:51:24
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