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カテゴリ:🔗少プリ
廊下側に積み上げ、後ろにいくにつれ高くなっていく椅子とその上に乗ってはしゃぐ馬鹿。
窓側に吊られ、部屋を呑み込む暗幕とそれに包まってはしゃぐ馬鹿。 結構気合を入れて作った小道具と、それを使って小芝居をする馬鹿。 だけどそれを叱りつける役目の鍵屋崎はここには居ない。安田に呼び出されて内緒話の真っ最中の筈だ。 「……あれ、止めたほうがよくねーか」 化粧の練習真っ最中のロンが言い出す。顔動かさないでほしいんだけどな。まあ長時間必死に顔硬直させてんだからちょっとぐらいは仕方ないかもしんないけど。振り向くこともなく淡々と呟く。 「ロンや僕が言ったって止めないよ、あいつらは」 「お前は言う気もないじゃねえか…」 ロンがぶすくれた顔で言う、ごもっとも。言っても一文の得にもならないどころか身ぐるみ剥がれちゃうのにどうして言う必要がある?委員長なら説教気質を遺憾なく発揮するか低能はほっとけとでも言うかのどっちかだろうし、ロンに至っては挑発に乗って喧嘩をしだす未来しか見えないじゃん。言うとまた顔動かすだろうから言わないけど。 「あっ」 「あー…」 僕とロンの目の前で積まれた椅子がひっくり返った。乗ってたやつが痛い痛いと騒いでるけどあんだけ騒ぐ元気があるなら平気だろう。 「まああれくらいならすぐ元に戻せ……」 「……うわ……!?」 突然の第二惨事にロンが目を見開いて息を呑む。あーあーあーあーあー。 目の前の暗幕が見る間にびりびり破れていく。 目の前の遊んでたやつらは慌ててるけど、後の祭り。 暇で遊んでたんだか忙しすぎてハイになってたんだか知らないけど、仕事がこれで何分分増えたんだか。 嫌な予感がして小道具を見る…… ……やばい。 「……何をしている」 冷たい声が教室に響き渡る。 「安田、何でここに居るんだよ!?」 「そうだそうだ、職員室でプリントの山片付けてるんじゃなかったのかよ!」 「職務怠慢だ!」 安田の凍りつきそうな一声の直後、遊んでた奴らが一斉にぴーちくぱーちく喚きだしたけど、教室の中の緊迫感は揺らぐことがない。むしろ安田に食ってかかる声が軒並み安田への怯えから絞り出されているように聞こえる。 「全くどうするつもりだ、こんな……」 お化け屋敷みたいになった教室内を見渡す安田の目が、一点で止まる。 「……」 「なーんか騒がしいけど、どうかしたの安田さん…って、……っ!………っ!!」 そのまま無表情をぴくりとだけ動かし固まった安田の背後から現れたレイジが、同じく固まる。 いや、むしろレイジの場合意図的に固まろうとしているように思える。笑わない為に。 「さっきから何をやっているんだ君達は………ロン、それはどうした」 「は?」 レイジと安田の横を邪魔そうにすり抜けた鍵屋崎が、数秒固まってから眉を潜める。 周りのやたら騒いでいた奴らも一斉にこっちを向き、背筋がびくっとする。 まあ仕方ない、いずれは覚悟しなきゃいけない事態なんだから。この後のロンの反応も含めて。 僕が教室の惨状に振り返ったことで初公開されたロンの顔。 それは。 「おい、リョウお前何した」 「ふっ……」 「ぶははははは!!」 「ぎゃははは!お前誰だよ!!」 「てめえら笑ってんじゃねえ!!リョウ、鏡見せろ!俺で遊んでたのかよ!?」 「いや、かっこいいぜロン」 「見ようによっては男前と評価できなくもないな」 「だーかーら!俺はどんな顔にされてんだよ!?」 因みにその後隈取が落ちないまま芝居をしたロンは、梅花ちゃんの裏表のない「似合ってるよ」で開きなおった。 -------- 【続】 ---------------- 割と似合う気が お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.10.27 23:44:33
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