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テーマ:胸糞(4)
カテゴリ:.1次題
急に明るく、けれど家族を邪険に扱うようになった姉・お鹿に、和助は疑念を抱いてはいました。
けれど最近急速に親しくなってきた永太郎のせいだろうと和助は決めつけ、永太郎に喧嘩を売ってはお鹿にきつく戒められるという日々を過ごしていました。 そんなある日、夢枕にお鹿が立ちました。 それも最近の冷たい表情の彼女ではなく、以前の柔らかく優しく頼りないながらもどこか芯のある表情の彼女です。 そんな彼女が、今のお鹿をどうにかして止めてほしい、できればその体から追い出してほしいというのなら、信じるほかありません。 和助は幽体のお鹿に従って、お鹿の顔を借りた、永太郎には性格の悪い化け物でしかない『そいつ』を追い出すことに決めました。 * けれど和助はお鹿の体を傷付けられません。 いつも両親や村の悪ガキに虐められていた情けないお鹿を守っていたのは年子の弟である和助だったのですから。 和助はあまり頭がよくありません。口では負けるにきまっています。 そんな時、いつものように父が商売女を…お鹿の稼いだ金をあてにして連れ込んできました。 そこで和助は思いついてしまいました。 体をそう傷付けずとも心を大きく砕く術を。 * お鹿は、普段から鈍くさく、また垢抜けない風貌をしてはいましたが、まともな頃の母に似た可愛らしい素顔と声をしていました。 和助はいつか、姉に綺麗な姿をさせていい所に嫁にやってやろうと思っていました。 もし嫁の貰い手がなくとも、両親を置いて静かで平和な所でともに暮らそうと思っていました。 父に似てしまった己は、せめて心と言動だけでもまともで姉を守れるものになろうと思っていたのです。 和助はその感情の源が家族愛であるとずっと信じていました。 けれど、お鹿を取り戻す為思いついたある方法を思い浮かべると、和助の男の部分がどうにも昂って仕方なくなってしまいました。 これは疲労のせいだろうと和助は思いました。 いくら心の広いお鹿でもこんな弟など軽蔑し、それ以上に怯えて近付かなくなるに決まっています。 和助は川で行水し、まずはあの性格の悪い仏神に直談判しに行くことに決めました。 己の生理現象などどうでもいいのです。 姉さえ取り戻せればいいのです。 そうでなくてはなりません。 【続く】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.10.21 01:08:31
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