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長押 綴

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2017.11.03
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カテゴリ:🔗少プリ
・直ちゃんの寿命が30過ぎというところから妄想したSS
・死ネタ注意






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「僕は結局何を残せたんだろうな」


 恵の心は、20を過ぎても童女のままだった。

 僕の方はといえば、もうそろそろ寿命と言われた年齢が近付いてきていた。



 けれど恵、そしてサムライを遺して死ぬわけにはいかない。

 そんな事を見舞いにやってきた安田と斎藤に相談したら、酷く複雑な顔をされた。

「……君の気持はわかる。それに、そうした思いが寿命を延びさせることもあるからね」
「私達の研究でも、クローンと遺伝子操作を利用し生み出した対人実験は君以外に臨床例がないんだ。だから理論上は君はこれくらいで寿命が来ると言われているだけで、そこまで確かな情報とは言えない」
「…鍵屋崎優、またはその後の研究情報をもう少し見せてもらってもいいか。
 彼の研究室に頻繁に出入りしていた例のA研究生も、独自のラボを作ったそうじゃないか。
 医学は日々進展している。だから気力という不確かな手段だけでなく、確固たる手段を発見したい。……聞いているかサムライ。大丈夫だ、僕はきちんと対処法を模索している。君がお百度参りに行ったり寒中の水垢離をしても恐らく確実だから分かったらいい加減体を痛めつけるのをやめろ」
「直…」
「うわあ、いつの間に居たの」
「つい先程だ」





 サムライも交えてたわいのない話をする。
 ここにもし恵が加わっていたらどんなに幸せだろうと夢想する。
 恐らく恵も、そしてサムライも優しいから、初めはお互いに距離を取るだろう。
 その距離感は僕への遠慮にも起因しているかもしれない。
 しかし段々と距離を詰め、気が付いたらサムライとロンのように親子、または年の離れた兄妹のようになるだろう。
 しかし二人とも少し純粋で悪人に騙されやすそうな所があるから二人まとめて悪人に掌の上で転がされてしまいそうだ。放っておけない。

 そうだ、置いては逝けない。

 ついでにたまに見舞いに来る、僕の身長を越したロンとにやけ面が鬱陶しいレイジと見舞いのたびに様々な漫画を勝手に押し付けてくる、僕の個室を図書館か何かと勘違いしているヨンイルを思い出す。
ロンはあの図体で未だに鉄砲玉のように危険な場所に飛び出していくし、それを追ってレイジ及び暴君は血の雨を降らせて嗤っているし、ヨンイルが置いていった書籍は一旦目を通して返却せねばならない。

 そうだ、置いては行けない。


「ー…ということで、君達にもこの極秘情報を特別に見せる」
「そういうのいいの~?」
「リョウ、君は他者に取り入って秘められた情報を聞き出すのがうまい。
 ビバリーも昔の記憶はまだ戻らないとはいえ電子系のハッカー能力によって得る情報は桁違い。そうした情報と僕がこうして持ってきた生体実験のデータを合わせれば僕の寿命を延ばす何らかの策が浮かぶかもしれない」
「僕達が大人しく協力すると思う~?身分偽って悪いことばっかしてる脱獄囚の僕らが」
「それは僕も同じだ。それに君達はどちらも好奇心によって身と周囲を滅ぼすタイプだが」
「君に言われたくないよ」
「…だが、君はビバリーの言う事なら聞くだろう。ビバリーは君が危なっかしければ言う事を聞くだろう。だから二人まとめて雇用する、どちらかが裏切ればもう片方の身が危ないと思え」
「とても寿命3年の人の台詞じゃないねぇ…もっと謙虚にお願いしたら考えてやるけど」
「残り時間が少ないとされているのだから必死にもなる。どうだ、やるか、やらないのか」
「…まあいいよ。大体の悪ふざけはやり飽きちゃったし。……ねえビバリー、どう?ずっと黙ってるけど。またニューロンフリーズしちゃった?」
「えっ、ああ、いっスよ」
「……決まりだな」
「はいはい。言っとくけど僕達は君の寿命なんてどうでもいいから。ただ好奇心満たす為にやるだけだから。……あと、手段本当に問わないけど、後で後悔しても遅いからね」
「それでもいい。やるだけやらない方が、後で後悔する」

 リョウは、お前はそういう奴だよね、と小馬鹿にしたように笑った。





 かくして僕達は寿命を延ばす工夫に専念した。
 僕の体に特定の薬物を投与する、一部をサイボーグ化する、もしくは精神をB-harryの如く電子化する、など。
 だが僕の寿命は細菌やウイルスでなく自身のDNAに由来するものだった。
 サイボーグ化は出来る場所にも限りがあり、その生身でないといけない場所ー例えば脳ーにもそうした不具合があるのであれば、体がいくら鋼であっても意味がなかった。
 精神の電子化は危険かつ特殊な成功例で、ビバリーの如く物心つくかつかないかといったあたりで改造手術を施していなければ不可能という話だった。
 現実的に考えれば、もう策はない。お手上げだった。


「……最近ちゃんと寝てる?寿命また削っちゃうよ?」
「必要最低限な睡眠は摂取している。問題ない。そうした形ばかりの心配をする時間があったら早く研究調査に戻れ」
「ほんっとに可愛くねえなお前!」


 幾度目かの無駄な言い争いをしてからの調査研究報告、その結果に僕とリョウはほぼ同時に脱力する。

「…今回も空振りか」
「研究機関の秘密も大したことないよねえ」
「今回君が落とした相手が末端に近いというだけかもしれないがな」
「あのねえ!メイクで隠しても隠し切れない隈を持った僕にそれ言う!?君のせいだよこれ!ママにも心配されるし!」

 最早悪態しか吐けなくなっている様子のリョウを、彼よりも精神的に年下の筈のビバリーが「まあまあ」と慰める。一種の様式美だ。

「……方法……ひとつ、ないことはないんすけど」
「……えっ、ほんとビバリー!?やっぱ君天才!ちゅーしてあげる!」

 やっとこの地獄が終わると笑うリョウに対し、ビバリーの笑顔は引きつっている。


「……本当に、『鍵屋崎直』さんがこの世に存在し続ければ、手段も倫理も問わないんですよね」

 その口ぶりに一抹の不安を感じはしたものの、寝不足と恵やサムライ、ついでにロンとレイジとヨンイルと安田と過ごす未来への希望で曇った僕の頭は、こくりと是を返してしまった。


 その決断が招く結果も想像せずに。





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最終更新日  2018.11.21 00:22:55
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