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長押 綴

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2017.11.05
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カテゴリ:.1次題
彼女は俺を信じてくれた。

そのうえで辛いのなら逃げてもいいと言った。

学校という戦場には出なくてもいいって。


そんな優しい彼女が好きだ。
そんな甘い彼女が好きだ。
だけど彼女もまた戦場で闘っているのだから、俺だけ逃げるわけにはいかない。


何より彼女は俺が嘘を吐いている事を知らない。

いじめのはじめのきっかけを作ったのは俺だったこと。

それを言ってもきっと彼女は俺に甘くしてくれるんだろうけど、その中にはきっと見てみないふりが含まれて、共感が薄くなるんだろう。

だから俺は言うわけにはいかない。


だけど転校の理由を言うたびに、造り上げたこれなら嫌われないだろうという自分を語るたびに、自分がどんどん薄汚くなっていくのが分かる。

あいつらだって嘘を吐いたんだからそれに俺が仕返しをするのは当然なのかもしれないけど、家族にはそう言われたけど、でもあいつらと同じ生き物になりたくない。


通信で勉強をして卒業認定を取る手もあるのかもしれないけど、そうすると他人と触れる機会がなくなる。
怖いけど、嘘を吐くのかもしれないけど、それでも他人と広く、あるいは深く接しても傷付けずにいられた経験が欲しい。


だから、彼女以外は信じすぎないで、寄り掛かりすぎないで、裏側の本音をも想像して、いかないと。


「おえっ……」




ああ、また駄目だ。

玄関に崩れ落ちる俺の足が作り物みたいに見えて、赤や黄色のノイズが混じって、死にたくなる。

嘘を吐けない弱さ、本当を守り抜けない弱さ、死にたくなる弱さ、死ねない弱さ。
彼女と何もかも違う弱さ。


彼女と一緒に居た頃は彼女の強さを借りられたのに、今ではそれももうない。

そしてまた、ドアの向こうで日が暮れていく。





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最終更新日  2018.11.14 11:47:18
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