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長押 綴

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2017.11.17
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カテゴリ:.1次題
神からの託宣をわらわは受けて答える。

民は神からの言葉だからこそそれを心して受け止める。

わらわの本当の言葉など誰も聴きはしない。



「なあ、俺を生かして逃がしてくれよ。巫女様なら簡単に出来るだろ?
 盗人は無事な姿で逃がすが吉。神からのお告げだっつってよ」
「そうじゃな、生かす事はできる。だが目を潰すか手を切り落とすか足を捥ぐか、いずれかを選ばねばならん。それがこの村の掟じゃ。それを破るにはよほどのことがなければ託宣と言えども曲げられぬ。わらわが昔世話になった、都の偉い役人の手のものじゃったという理由があるなら考えてやってもよいぞ。それで、その伝手はあるのか」
「……ねえよ」

高い声、低い身長。
青年は見たところ12というところか。わらわより3つ幼いのにこんなことに手を染めて。

「……俺には帰って、食わせてやんなきゃいけねえ妹がいんだよ。なあ頼むよ、おとうもおかあも流行り病で死んじまった、俺にはもうこれしか食っていく術がねえんだ」

「……」

「なあ」

「わらわの言う事を本当に聴くなら、妹だけでも生かしてやるぞ」

「……どういうことだ」

「神の言葉以外を聴く僕が欲しかったのじゃ」





 どんなに聴き耳を立てても、どんなに自分の頭で考えて、自分の言葉で話しても、全て神の手柄になる。

「お前は死んだことにする。妹は巫女の従者として雇ってやるが、お前は影でわらわの身を守り、そしてあらゆる物事をわらわの為に知るがよい」

 一人くらい、神を信じない者が傍にいてもよいじゃろう。

「お前はわらわを助けたのじゃ」

 にこりと笑うわらわに、未来の僕はごくりと喉を鳴らした。

「これまでではなく、これから、命と魂と誇りを賭して、助けるのじゃ」





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最終更新日  2018.11.22 18:56:18
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