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長押 綴

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2018.01.09
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カテゴリ:.1次題
きっと僕はキューピッドの生まれ変わりなんだろう。
小柄な体、中性的な顔に、色素の薄い髪と肌と目。
けれどそれよりももっと重大な、僕がそう自覚するに至った理由がある。

自分が会わせた人同士は皆、自分よりも仲良くなる。

恋人であれ親友であれ、一生を通じての絆を築く。

それに後悔するのはいつものことだった。

席を代わってやるのもいつものことだった。

だが彼は何故か未だに僕を、彼女との間に置きたがる。

歩いている時は僕が真ん中だ。

いたたまれずに僕が外に行こうとしても轢かれるぞ、とか壁にぶつかるぞ、とか言って僕をもとに戻してしまう。

座っている時も彼は僕を膝の上に座らせる。

確かに僕は身長が低いが、ぬいぐるみのようにこうして置いておくのはどうなんだろう。

最初は笑っていた彼女も、じきに曖昧な困ったような顔を僕に向けるだけとなった。

だから僕は気を利かせて二人を二人っきりにさせようとあれこれ画策したのに、彼ときたら僕が居ないとうまく話せないだなんてへたれる。

話せるよ。だってお前はあの娘に、既に僕よりずっと好かれてるんだから。
少し話がつっかえるとか、つまんない話をするくらい、彼女は許してくれるだろう。

それとも何だ、なよっちい僕を横に置いて自分のたくましさでもアピールしたいのか。


イライラした僕は、縋る彼の手を振り払い、以後二人どちらとも接触しないことに決めた。


その後、風の噂で二人は別れたと聞いた。









あれから十年経った。

今では僕もすっかり大人になった。
A●Bに入れそうと言われた顔も、学生の頃に鍛えまくったおかげでいかつくなり、美大ではパンチパーマあてたような某彫像に似てるよな、なんて言われた。

それでも僕のキューピッドな能力は健在で、僕はもう気軽に彼女や親友同士を会わせないようにしていた。


そんな時、仕事の帰りに彼に会った。

中学生の時よりたくましくなっていた彼は、同じくたくましくなっていた僕を見て一瞬で相好を崩して言った。

「久しぶり!……あ、俺の事、覚えてるか?」

覚えてるとも。
僕が最後に縁を持ってあげようとした相手だから。

「ああ。好井、久しぶり。変わってないな」
「愛田は随分逞しくなったなあ」

彼は僕の気まずさなど気にしていないかのように近付き、大型犬のように豪快に笑った。

「……そういえば、恋懸こいけさんは?まだ付き合ってるの?」
「ああ、懐かしいな。とっくの昔に別れたよ」
「そうか…残念だな」
「ま、しゃーないしゃーない」

訊かないのも不自然な気がして言ったけれど、彼はむしろ言われる方が心外だとでも言うように素っ気なく返した。

「今帰り?これも何かの縁だし、飯食いに行かねえ?ここら辺にうまい飯屋があるんだ」
「……そうか、じゃあ、紹介してくれ」

ついでにこいつが、誰かいい人を紹介して、キューピッドになってくれたらいいのに。
そんな僕の期待を裏切るように、彼は静かな、狭い個室のある居酒屋に僕を連れて行った。

「だっから、僕は昔っから、大事な人がみんなくっついて離れちゃうのが嫌で嫌で」
「うん、そうか、でも俺は今お前といるからな」
「…それは、ありがとよ…」
「よかったら今度、一緒にどっか遊びに行こうぜ」
「……いいのか?」
「おーよ」
「…うん………じゃあ…まあ…行くか」
「めっちゃ戸惑うやん」

笑う彼を見て、実感する。
ああ、これだ、欲しかったのは。

安心して、微睡む僕に好井の手が伸びる。
起きろって言われるか、肩をたたかれるか。
そんな予想に反して、手は眠りを促すように優しく僕の頭を撫でた。

僕の意識はゆっくりと闇に溶けていった。


【続】





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最終更新日  2018.12.22 05:01:53
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