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好き嫌いはない方だった。
嫌いなものを食べるくらいなら餓えた方がましという奴の気持ちが分からなかった。 今となってはそれが羨ましくもある。 * 信号無視のトラックにはねられて俺は異世界に行った。 そこで俺は勇者になるどころか、魔物になった。 姿が変わってればまだ救いはあったのかもしれない。 俺は元の人間の姿そのままでこの世界にやってきてしまった。 何せこの世界では、全然人が居なかった。 変なモンスターばっかりが群れで暮らしてて、そいつらは文明を築きかけてる節すらあった。 むしろ俺の方が異世界から召喚された魔物みたいな扱い。 いつもいつも食べ物にありつくたび、その食べ物の仲間に追いかけられて逃げ回る日々。 植物も動物もみんながみんなそう。 そいつらのエネルギー源は土のような塊と太陽なもんだから、俺一人が人食い鬼のような存在になってる。 俺一人野垂れ死ねばいいんだろうが、それでも俺の生命維持本能がそれを許してくれない。 いっそ俺なんか何か別の生き物が食って、楽に無にしてくれりゃいいのに。 それか、俺と同じような境遇の人間が一人でも二人でも居てほしい。 年齢も外見も思想も言語もどうでもいい、ただ俺にとって美味しそうに見えなきゃいい。 そう思いながら俺は眠りにつく。 生き物のいないこの洞。 この世界のところどころにあるここは暖かくて、いつも俺は溶けるように眠りに落ちていく。 疲れや凝りがびっくりするほど取れて、体も柔らかくなっているような気がする。 目が覚めるとひどく空腹に襲われるのが、ただ一つの難点だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.01.31 20:09:14
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